リース取引に係るインボイス要不要の判断については、リース事業協会のパンフレットをご紹介しながら、インボイスの必要の有無についても表で示してご案内しました。
売買として取扱われるファイナンス・リース取引(所有権移転外ファイナンス・リース取引)については、原則、当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間の課税仕入れとして処理(一括控除)をします。
ただし、賃借人が賃貸借処理をしている場合には、原則ではなく、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)をすることもできます。
この場合のインボイスの取扱いについて、先日ご案内した「令和5年4月改訂 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 国税庁」の問97として追加されています。
(所有権移転外ファイナンス・リース取引で賃借人が賃貸借処理した場合の適格請求書の保存)
問97 所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡時に適格請求書の交付義務が生じるとのことですが、当該リース取引につき賃借人が賃貸借処理し、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース譲渡時に交付を受ける適格請求書の保存により仕入税額控除の適用を受けることができますか。【令和5年4月追加】
【答】
所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「リース取引」をいい、以下「移転外リース取引」といいます。)については、リース資産の譲渡として取り扱われるため、移転外リース取引によりリース資産を賃借した賃借人においては、当該リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間の課税仕入れとして処理(一括控除)することが原則です。
しかしながら、経理実務の簡便性という観点から、移転外リース取引について賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る取引に準じた会計処理をいいます。)している場合、リース資産の譲渡時の課税仕入れとするのではなく、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)して差し支えないこととしています。
この点、移転外リース取引における適格請求書については、リース資産の引渡し時に当該リース取引の全額に対する適格請求書が交付されるものと考えられます。
したがって、移転外リース取引について、賃借人が賃貸借処理によりそのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合、リース資産の引渡し時に交付を受けた適格請求書を保存することにより、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間ごとに計上した課税仕入れに係る仕入税額控除の適用要件を満たすこととなります。
なお、当該適格請求書については、リース料の最終支払期日(移転外リース取引について賃貸借処理により計上する最後の課税仕入れ)の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間保存する必要があります。
(注)令和5年10月1日前に行われた移転外リース取引について、賃借人が賃貸借処理によりそのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとして処理(分割控除)している場合の当該移転外リース取引に係る同日以後に賃貸借処理により計上する課税仕入れについては、区分記載請求書等保存方式により仕入税額控除の適用を受けることとなります。
賃貸借処理をしていた場合であっても、そもそもそのリース取引は売買として取扱われるものであるため、売買として処理をした場合と同様、リース資産の引渡し時に交付を受けたインボイスを保存することにより、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間ごとに計上した課税仕入れに係る仕入税額控除の適用要件を満たすこととなります。
10月1日前後でのインボイスの要不要についても同様となるため、一括控除か分割控除かの処理の違いでインボイスの要不要は異なることなく、先日ご案内した表のとおりとなります。
なお、1点、一括控除と分割控除の違いがあります。
書類の保存期間です。
一括控除の場合は、課税仕入れとして処理をしたリース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する必要があります。
他方、分割控除をした場合には、リース料の最終支払期日(=賃貸借処理により計上する最後の課税仕入れ)の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する必要があります。
その保存対象となる書類がインボイスになるのか否かの違いだけで、保存期間の考え方は従来と同様ですが、この点も改めてご確認ください。