免税事業者である個人事業者がインボイス制度開始にあわせて適格請求書発行事業者となるために、登録申請書を簡易課税制度選択届出書と同時に提出していた場合で、インボイス制度開始前に簡易課税制度の選択をやっぱりやめたいと思ったとき、届出書の取り下げはできるのでしょうか。
この点については、先日来ご案内している財務省作成の「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答(令和5年1月20日時点)」の【問7】に答えがあります。
これによれば、
- 簡易課税制度選択届出書は、その届出書の提出可能な期限までは、取り下げが可能である
ことを前提に、
- 免税事業者が登録申請を行った場合には、登録を受けた日から課税事業者となることができる経過措置が設けられていること(つまり、インボイス制度開始にあわせて適格請求書発行事業者となるためであれば、10月1日が登録日=課税事業者となる日)
- この経過措置の適用を受ける場合、登録開始日を含む課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出することにより、その課税期間から簡易課税制度を適用することができる(つまり、10月1日からの課税期間中に提出をすれば、簡易課税制度を適用)
を踏まえると、取り下げることは可能で、その手続の期限は提出期限である10月1日を含む課税期間終了日となり、個人事業者であれば令和5年12月31日ということになります。
取り下げるための手続として、具体的には、取下対象となる届出書が特定できるよう、次の項目を記載した書面を用意し、そこに署名をした上で、所轄の税務署へ提出することになるようです。
- 提出日
- 届出書の様式名(表題)
- 提出方法(書面又は e-Tax)
- 届出者の氏名・名称
- 納税地
- 提出した届出書を取り下げる旨
消費税の2割納税の特例ができることで、簡易課税制度を選択適用しようとする場合、実質、卸売業以外はこの特例の方が得です。それならわざわざ今、簡易課税制度を選択しておく必要もない、と考える方もいらっしゃるでしょう。簡易課税制度は2年の継続適用の縛りがあることや、実際の納税額が特例の2割を切る可能性があれば本則課税である方が得です。ただし、簡易課税制度のメリットの1つである、支払関係のインボイスの保存が不要、という点がありますし、特例は期間限定措置であることから、特例終了にあわせて提出すべき簡易課税制度選択届出書の提出し忘れ、という可能性もあります。どちらが得なのか、リスクが少ないのかは事業者によって異なると思いますが、しっかりと検討しておきたいものです。
なお、簡易課税制度選択届出書を提出している場合には、簡易課税か2割納税の特例のいずれか、提出していなければ、本則課税か2割納税の特例のいずれかの選択となります。この点は【問6】に掲載されていますので、あわせてご確認ください。その際、そもそも対象者であることが大前提だ、ということも忘れないようにしましょう。