2022/01/19 相談者が身近にいない税目
2022/01/12 もはや横並びではなくなった……
2021/12/29 特例リスケによる資金繰り支援
2021/12/22 銀行法改正に会計事務所側はどう対応するか……
2021/12/15 ベンチャーでなくとも未公開株流通市場に参加できる
2021/12/08 本格化してきた銀行再編が中小企業に与える影響
2021/12/01 小規模調剤薬局のコンサル需要

相談者が身近にいない税目(2022/01/19)

 昨年12月に令和2年分の国税庁の相続税申告実績が公表された。概要は

  1. 被相続人数は約137万人
  2. 申告した被相続人は約12万人
  3. 課税割合は8.8%
  4. 相続税額は約2兆円強
  5. 被相続人1人当たり課税価格は約1.3億円
  6. 被相続人1人当たり相続税額は約1,700万円

 同時に公表された相続税調査の状況を見ると、令和2事務年度(R2/7月〜R3/6月)の概要は、コロナ禍での税務調査という特殊事情もあり

  1. 実地調査件数は約5,100件で、前年の約1/2相当
  2. 申告漏れ件数は約4,400件で、実地件数件数の約9割弱
  3. 1件当たり追徴税額が943万円で、前年比で約1.5倍に達した

 実地調査を選択した先の課税価格帯が3億円以上の申告書を、主に重点調査した結果ともいえる。

 無申告事案に対しては

  1. 実地調査件数は462件で、前年の約4割強
  2. うち申告漏れ件数が409件
  3. 1件当たり追徴税額が1,328万円で、前年の約1.5倍

 東京国税局の相続税申告実績の概要は

  1. 実地調査件数は1,522件
  2. うち申告漏れ件数は1,342件で、非違割合は92%
  3. 1件当たり追徴税額が1,286万円で、前年の約1.9倍に相当

 コロナが収束し平時の税務調査を迎えると、無申告事案の実地調査件数も1,000件は超えることは確実で、特に被相続人の大部分は女性になるものと思料される。事業経営などで税理士と接点の少ない被相続人が多くなり、意図的な脱税でなく、「相談者が身近にいない」ことでの相続税無申告事案を防ぐ努力が、税理士業界に更に求められてくる。

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もはや横並びではなくなった……(2022/01/12)

 金融庁の「経営者保証に関するガイドライン」の活用実績が、半期単位で公表される。直近のデータ(2021年9月−2022年3月)によると、全国の民間金融機関532機関の「経営者保証に依存しない融資の割合」は30.2%であった。新規融資件数が約125万件に対し、無保証で新規融資した件数が約38万件だった。

 この「依存しない割合」を、過去の同期間で見ると

  1. @ 2020年9月−2021年3月26.4%
  2. A 2019年9月−2020年3月21.4%
  3. B 2018年9月−2019年3月19.1%
  4. C 2017年9月−2018年3月16.3%

 このようにガイドラインの活用実績の水準が上がってきているものの、この5年間で「依存しない割合」が倍増とまではいかず、やっと「3件の新規融資の申し込みに対し1件の無保証融資」が現実である。

 全国の地銀別では、2020年度下期のデータになるが、活用実績の割合が最も高い地銀は東京スター銀行で89.8%、2位が石川県の北國銀行で78.0%、3位は山口県の西京銀行で70.1%と続く。

 活用実績の最も低い地銀は、神奈川銀行の11.9%で次に低いのが福島県の東邦銀行で16.2%になる。福島県のもう一つの地銀、福島銀行の活用実績も19.5%で、福島県の中小企業の大半は、従来の経営者保証付きの新規融資しか、道が残されていないようだ。

 同一地域の異なる地銀間でも活用実績の値が大きく違うところもある。山口県では山口銀行の活用実績値が37.6%に対し西京銀行は70.1%に達している。

 政府系金融機関でも、商工中金が活用実績値70.9%に対し、日本政策金融公庫は42.2%(2021年上期実績)となっている。日本政策金融公庫は約、82,000件の新規融資に対し、無保証融資は約35,000件に過ぎない。

 金融庁がガイドラインに積極的に働きかけてきたことからすると、公庫の実績は物足りないといえるのではないか。

 各自治体の保証協会でも、「信用保証を承諾した件数」に対し「無保証人で保証承諾した件数」の割合を見ると(2021年上期実績)、1位が島根県信用保証協会で、2位が佐賀県信用保証協会、3位が岩手県信用保証協会と続く。

 民間金融機関も保証協会も横並びで営業する時代ではなくなった。新規融資を申し込む側も、金融機関や保証協会の実情を把握・研究して、どこと取引するのがベストなのか考えて行動しないといけない。

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特例リスケによる資金繰り支援(2021/12/29)

 オミクロン株の感染状況によっては、過剰債務に陥っている中小企業には厳しい年末・年始になる。リスケを受け入れてもらい、追加融資もでき、「さあ、これから」と意気盛んの事業者には、再度の感染拡大で行動制限などが発出されたら「打つ手がなくなってしまう」と感じている人も多いだろう。

 中小企業庁は2022年度に、地銀・信金の行員約100名程度を「中小企業再生支援協議会」に派遣して、金融・法律・税務などに精通した「再生のプロ」を養成し、地域の中小企業支援に充てる予算として、6億円を計上した。

 コロナ禍の影響が大きかった令和2年度に、同協議会に持ち込まれた相談案件は5,580件だった。うち従来型の再生支援完了件数が406件であるのに対し、特定リスケ計画策定支援完了件数は2,749件と、従来型の7倍程度に急増した。令和3年4〜6月の相談件数は1,051件で、同様に従来型支援完了が130件に対し特例リスケ型が420件と、3倍強に増えている。

  1. 急激な資金繰り悪化で緊急的に借入金の元本返済を止めたい
  2. 複数の金融機関のリスケなどの調整が難航している

 このような状況を抱える事業者(個人事業も含む)は、各都道府県にある中小企業再生支援協議会に相談を持ち掛けるとよい。事業者に代わって同協議会が、複数の金融機関に一括して最長1年間の元本返済猶予を要請してくれる。

 しかも計画策定までは無償で行い、特定リスケ支援後の事業改善まで助言が受けられる(有償)メリットがある。

 来年は事業再生支援が急増するだろう。銀行員が「再生のプロ」として、顧問先企業にコンサルしてくる未来が見えてくる。会計事務所も、「企業再生」の知識は得ておきたいところだ。

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銀行法改正に会計事務所側はどう対応するか……(2021/12/22)

 11月22日に施行された銀行法改正での最大のポイントは、「銀行本体による登録型人材派遣業」を行うことが可能になったことではないか。地銀の取引先の多くは地域の中小企業であり、その中小企業が抱える多くの課題が「人材」にある。

 具体的には

  1. @ 親族内承継が困難で、第三者承継を地銀の幹部社員に求めたい
  2. A 経理・労務といったバックオフィス業務の改善を取引銀行からの短期派遣で行いたい
  3. B IT系の知識・経験のある銀行員の派遣を求めたい 等々

 今後の地銀再編により支店の統廃合は必至で、かつ、行内のシステム化により余剰となる銀行員が、自身の属する銀行本体の「人材派遣部」に登録し、銀行と取引先企業で交わされる派遣契約に基づいて「行員」から「派遣先社員(社長)」として働く姿を、来年からは見ることができるようになるかもしれない。

 中小企業経営者の相談役・バックオフィス業務の指導・代行を行ってきた会計事務所は、「銀行の人材派遣」にどう対応していけば良いのだろうか。

  1. @ 過剰債務に陥っている顧問先に、取引銀行から財務部長として派遣したいと打診された
  2. A 銀行から派遣された人材が優秀で、会計事務所の現サービスに満足感を感じない
  3. B 派遣された経理人材が、会計事務所推薦の会計システムを変更したいと打診してきた

 上記のような相談や高水準の要望などが、銀行の人材派遣によって会計事務所に問われてくる時代になってくるかもしれないのだ。

 過剰債務に陥っている企業からすると

  1. @ 派遣された人材が、企業側の立場で経営の諸課題に真摯に対応してくれるなら有難いが
  2. A 企業の内実を知ることで、今後の融資や返済条件に不利に働くのならば、派遣人材を受け入れられない

 二律背反のところもあるが、銀行も登録型人材派遣事業を本体事業として行うのであれば、優越的地位の乱用に該当するような行為がないようにモニタリングするだろう。しかしそれでも、すでに行っている人材紹介事業と違って、10倍以上のマーケットに相当する「人材派遣事業」に魅力を感じる地銀が増えてくることは間違いないであろう。

 地域における雇用責任を果たし、潰れては困る企業に社長人材として銀行から派遣し、再生を果たしていくような事例が次々と出てくるようになれば、銀行側も優秀な若手人材を確保することも可能になる。そしてそれが取引先である中小企業の成長に繋がっていく「好循環」が生まれれば、銀行法改正による規制緩和は正しかったことになる。

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ベンチャーでなくとも未公開株流通市場に参加できる(2021/12/15)

 株式投資型クラウドファンディング(以下株式投資型CF)の最大手で「ファンディーノ」を運営する日本クラウドキャピタルが、12月8日から「ファンディーノマーケット」で未公開株のネットによる売買を開始した。

 日本証券業協会の統計データによると、2021年1〜10月間に株式投資型CFで資金調達した企業数及び調達額は株式・新株予約権合わせ97社、32億円に達し、2020年の69社、21億円に比して大幅に増加している。

 一つの事例だが、12月11日の午前10時から開始されたファンディーノに登録したベンチャー企業の株式取得希望者は、開始後1時間で68人、募集額は目標額の143%の1,150万円になっている。

 ファンディーノに投資家として会員登録しておくと、新規未公開株の募集案内がメールで届く。過去には数分で目標額を突破し募集打ち切りとなる銘柄もあった。

 「ファンディーノマーケット」は未公開株の銘柄単位で「株式コミュニティ」を作り、そのコミュニティに属する参加者間で値付けをオンラインで行い、売買する仕組みになっている。

 株主コミュニティの参加者としては、その会社の役員、従業員、その親族、株主、継続的な取引先といった会社関係者のほか、所謂エンゼル投資家や、地域内で信頼のある未公開企業からの株主優待などを期待する地元民が想定されている。

 株式投資型CFで資金調達というと、ベンチャーやスタートアップのイメージが先行する。しかしむしろ、地域内で浸透している交通系、小売り、サービスなどの事業者が株主優待として割引クーポンを発行したり、特別なイベントを株主向けに行ったりすることで、自社の株主になってもらい「株式コミュニティ」の参加者登録をしておくことで、コミュニティ内での売買で換金することも可能になってくる。要は、株式コミュニティの参加数の増加が、株式売買の流動性を高めることになる。

 未公開株は、過去も「胡散臭い」「換金性に乏しい」など評判も良くない。グリーンシート市場も閉鎖の憂き目にあった。しかし昨今の株式投資型CFの活況を見ると、再び未公開株式の二次流通市場が、成熟型の中小企業にとって新たな資金調達の手段になるかもしれない、と感じる。

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本格化してきた銀行再編が中小企業に与える影響(2021/12/08)

 名古屋市に本店を持つ第二地銀の愛知銀行と中京銀行の経営統合が報じられた。報道によると22年度にも持ち株会社化して24年度には合併するとの予定らしい。

 21年9月期の両行の中間決算を見ると

  預金 貸出金 経常利益
愛知銀行 3.3兆円 2.6兆円 66億円(前期比200%)
中京銀行 1.9兆円 1.5兆円 21億円(前期比130%)
合計 5.2兆円 4.1兆円 87億円

 預金量、貸出金とも同じく第二地銀の名古屋銀行を抜いて一番手になり、岐阜県の十六銀行や三重県の百五銀行とも肩を並べる水準になる。今回の再編劇は、中京銀行株式を4割近く保有する三菱UFJ銀行が、自行のリスク資産を減少させる必要が生じたため、同様に親密銀行だった愛知銀行に持ち掛けたものではないかと思われている。

 持ち株会社の社長には、愛知銀行トップが就任するとも伝えられている。今後の合併に向けて進んだ場合、融資を受けている中小企業経営者はどんな対応を考えておく必要があるか、整理してみよう。銀行の合併は、まず店舗の整理統合から始まる。両行の店舗数を見ると

  名古屋市内店舗数 名古屋市を除く愛知県内店舗数
愛知銀行 49 49
中京銀行 40 47

 両行の店舗一覧を見ても大半の店舗が同一地域内で重複しており、単純に考えれば合併後の店舗数は足し算でなく店舗数の多い愛知銀行の店舗数に収斂していくと見ておくべきだろう。
 取引先として親しんできた支店長が現状で200名近くいるが、合併後は半減するだろう。

 おそらく愛知銀行が主体の再編劇になるものと考えて、中京銀行メイン先の中小企業は、愛知銀行との取引も考慮しておいた方が良いのかもしれない。
 特にコロナ禍で過剰融資を抱えている企業でリスケ、再リスケが必要な場合に、取引支店が無くなる、自社の現状を理解している支店長がいなくなるといったことは致命傷にもなりかねない。十分な対策が必要だ。

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小規模調剤薬局のコンサル需要(2021/12/01)

 コロナ感染第6波も危惧される中、現状の報道される感染者数は激減状態のままである。

 帝国データバンクは調べをもとに、医薬品小売業(薬店・調剤薬局など)の休廃業が倒産件数の5倍程度に達するのではと警鐘を鳴らしている。

 調剤薬局の売上高の大半は、病医院から発行される処方箋枚数の扱い数量で決定される。コロナ感染の流行時期と日本薬剤師会が公表する年月単位での処方箋枚数とを比較してみた。

コロナ第○波 年月 処方箋枚数(万枚) 前年同月比
第1波 R2/5 5,334 81.3
第2波 R2/8 5,914 91.7
第3波 R3/1 5,665 86.6
第4波 R3/5
第5波 R3/8 ? ?

※日本薬剤師会のデータより
https://www.nichiyaku.or.jp/activities/division/faqShinchoku.html
現段階で、令和3年2月までの数字が発表されています。

 厚労省の令和2年度「処方箋発行元医療機関分析」によると、診療科別の調剤技術料(処方箋枚数にほぼ比例)は対前年比で小児科▲25.6%、耳鼻咽喉科▲21.0%、外科▲10.7%と落ち込んでおり、結果、特定の小児科や耳鼻咽喉科からの処方箋の受取りに偏っている調剤薬局のダメージは、相当多いと考えられる。

 年始から第6波の到来が予想され、同時に2年にわたるコロナ禍で生じた患者の「通院抑制」も相まって、小規模調剤薬局の経営はしばらく厳しい状態が続くであろう。

 独自路線で行くのか、大手ドラッグチェーンの傘下に入るか、逆に廃業を検討している同業のM&Aで一定地域のシェア拡大路線で行くのか、戦略的判断が求められる。

 ある地方金融機関は、業種別コンサルティングの強化種目に「地域の調剤薬局」を挙げているそうだ。


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