2021/06/23 遺言書を作って法務局に預けた……
2021/06/16 マイナンバーと財産債務調書
2021/06/09 税理士賠償責任保険の事故率が急増
2021/06/02 緊急事態宣言下の税務調査
2021/05/26 社長自ら債務償還年数を把握しておく
2021/05/19 顧問先の経営者・配偶者が認知症になったら……
2021/05/12 資金繰りのガンは消費税

遺言書を作って法務局に預けた……(2021/06/23)

 昨年の7月から開始された自筆証書遺言保管制度が約1年経過しようとしている。法務局のホームページに保管制度の利用状況が公開されているが、これによると昨年7月から今年の3月までの累計で保管申請数が16,721件で平均で月に2,000件前後の利用状況だ。

 私も実際に体験してみた。動機は相続人に自らの意思を伝え、死後の煩わしい手続きを極力回避できるようにしたいことにあった。

 手順は

  1. 遺言書の作成を行う、自筆でA-4のコピー用紙に記載、署名・押印(認印)
  2. 財産目録の作成、パソコンで作成後、署名は自筆
  3. コンビニで住民票を取ってくる、戸籍筆頭者名の入ったもの
  4. 法務省のHPから遺言書の保管申請書(5枚)をダウンロードして作成
    保管申請書には受遺者、推定相続人、遺言執行者等の記載があり、違い・意味を理化しておくことは必要
  5. 法務局支局(全国で300ヶ所以上)に電話で申請書持参日の予約を入れる
  6. 当日に運転免許証で本人確認を行い、持参資料を提出
  7. 保管料金3,900円の収入印紙を局内で購入し、申請書に添付
  8. 1時間ほど待ち保管証を受領して終了した

 基本的に法務局でのチェックは、提出書類の形式に非がないかを見るもので、遺言書の妥当性や文言チェックはないので、自身で一定の知識を有する努力は必要であるが、金融資産主体で不動産も自宅のみなら、素人の個人でも十分にこの制度は使えるものだと思った。遺言書の妥当性でも遺留分を加味して作成しておけば、後日の争族にまで発展することは一般では考えられない。

 遺言書の書き方見本 → 自筆証書遺言保管制度 → 相続した不動産の登記アプリ → 相続税申告アプリ…… 死亡者100万人超の一連の相続手続きが、専門家の手を介することなく終える時代に突入してきたのかもしれない。
 逆に言えば、専門家を必要とするターゲット層がどこか、その層にどのように訴求していくか、相続マーケティング力が試される時代ともいえよう。

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マイナンバーと財産債務調書(2021/06/16)

 来年の所得税の確定申告は、「財産債務調書」を提出しなければいけない個人にとって、頭の痛い事柄になるかもしれない。担当する会計事務所の所員も同様だ。

 所得2000万円以上かつ金融資産1億円以上、財産総額3億円以上であれば、財産債務調書を詳細に提出しなければならない。基本は時価なので、今年のような株高では、昨年の運用資産が1億円に達していなくても今年の年末残高で1億円を超える人は十分に有りうる。

 会社のオーナーが保有する自社株も、業種によっては株高に比例して高くなっていることも考えられ、上場株や投資信託の時価と合計して1億円以上になる会社経営者や、高額所得者である開業医、不動産オーナーも「財産債務調書」の作成に悩むことであろう。

 担当する所員も、顧客から「どこまで正確に記載するんだい…株式の個々の時価まで税務署には判らんだろう?」といった相談は昔からあった。

 しかし、ついに今年の年末で、証券口座とマイナンバーが強制的に紐づくことになる。自主的に証券会社の問い合わせに応じてマイナンバーを提出した個人は、6割強程度ともいわれている。そこで証券会社は、自社に証券口座があるがマイナンバーが未提出の個人をリストアップして、「証券保管振替機構」(ほふり)にマイナンバーの照会をかけ取得することになる。

 これで税務署はマイナンバーで証券会社に個々の財産の照会をかけ、先の例では「財産債務調書」の正確さを把握することも可能になる。

 財産債務調書の未提出にはペナルティが課せられるし、過去提出済みの財産債務調書と比較して、一部財産の記入漏れや大幅な時価評価額の違いがあれば、その弁明の方法も考えておかねばならない。厄介な作業が待ち受けている。今からの対応が必要ではないか?

 所得に見合わない証券口座の異常な残高や、家族名義の口座間の入出金等、マイナンバーで調査を掛けられても説明がつくように準備も必要だ。

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税理士賠償責任保険の事故率が急増(2021/06/09)

 日税連サービスが公表した税理士職業賠償責任保険の最近の加入状況や事故件数推移等々の報告内容を見ると、2021年4月時点の加入状況は

@ 個人開業税理士 29,642件 加入割合 52.56%
A 法人開業税理士 3,769件 加入割合 86.52%

となり、個人開業税理士では2件に1件は保険未加入という状況であった。

 保険金事故の発生件数、支払い保険金等を同社の資料で読むと

年度 事故件数 保険金額 1事故当たり保険金
2014 328件 115,600万円 352万円
2019 511件 225,900万円 442万円

 この6年間で件数で1.5倍、支払い保険金で約2倍と急増している。

 2019年の支払い保険金の金額別件数では、500万円未満は400件で全体の8割弱であるが、支払い保険金が3,000万円以上では14件の事故(前年の2018年は3件)があり、支払い保険金合計で6億円強で、最高額は1億円であった。

 税目別で見ると2019年は

税目 件数 支払い保険金 1事故当たり保険金
消費税 252件 96,700万円 383万円
法人税 131件 68,500万円 522万円

で、この2つの税目の事故件数割合は約7割強となった。特筆は贈与税の事故件数が17件あったが支払い保険金額は14,800万円で平均額は870万円の高額となったことが挙げられる。

 保険事故の原因別要因で圧倒的に多いのが届出関係書類の提出失念である。

 消費税では簡易課税選択適用、簡易課税不適用届、課税事業者選択届の3つで165件あり、消費税事故原因の6割強を占めている。

 法人税では事前確定届出給与の提出失念、同変更届提出失念、青色申告承認申請届の提出失念の3つで50件を占めている。

 こうした提出失念は事務所の管理体制を再度検討しなおすべき問題であり、今後の「紙保存」から「電子保存」へ移行していく際に「担当者の提出失念」をどう防ぐのかの仕組み作りも急がれよう。

 2019年の保険事故の中に「配当所得の住民税申告不要制度」を担当者が知らずに処理し、住民税や健康保険料が過大に納付となった事実を納税者が知って、会計事務所を訴えたところ、約200万円の保険金が支払われたケースがあった。

 納税者の税に関するIQが上がってくると、こうした事件も表面化してくるだろう。

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緊急事態宣言下の税務調査(2021/06/02)

 第3回目の緊急事態宣言の期間延長が発令された。昨年4月に第1回目の緊急事態宣言を受けて、2回目が1月そして今回が6月20日までの延長となった。

 税務調査の事務年度は7月から翌6月なので、令和元年7月〜令和2年6月(令和元年事務年度)の税務調査状況を国税庁の報道発表資料で見ると

調査内容 調査件数(件) 前年比(%) 1件当たり追徴税額(万円) 前年比(%)
所得税実地調査 59,683 81.1 166 126.7
消費税(個人事業者)調査 30,736 80.0 91 116.7
富裕層に対する調査 4,463 84.0 581 151.7
海外投資をした富裕層調査 936 109.0 1,571 171.9
海外投資をした個人の調査 3,942 90.1 627 167.2
法人税の実地調査 76,000 77.1 215.6 109.7
法人消費税実地調査 74,000 77.4 157.7 108.9
相続税の調査 10,635 85.3 641 112.8
相続税の簡易な接触の調査 8,632 83.5 48 114.0
無申告事案に対する実地調査 1,077 78.0 897 122.6
海外関連資産に対する実地調査 1,088 83.9 5,193 127.8

 税務調査の原則は対面による調査だが、コロナ禍により調査件数は大幅に減少している。一方で上記表を見る限りにおいては、主要な税目の1件(社)当たりの本税・加算税等を含んだ追徴税額は前年比で増加という現象が見受けられる。今年も7月から新事務年度が始まるが、実地による調査件数は昨年同様に減少するだろうが、調査対象の狙いを定めて重点的に「追徴税額」UPに努めることだろう。

 特に海外投資を行っている法人・個人富裕層は今年も重要なターゲットになるに違いない。

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社長自ら債務償還年数を把握しておく(2021/05/26)

 東京商工リサーチが「中小企業の債務の過剰感」に関するアンケート結果を先日公表した。

 回答した中小企業7327社の「コロナ前から過剰感がある」が13.2%、「コロナ後に過剰となった」が21.8%で合わせると35.0%となり、中小企業の3社に1社が「過剰債務」と認識している結果となった。

何をもって過剰債務とするかの考え方は、貸す側の金融機関は財務分析でも「有利子負債対平均月商倍率」や「債務償還年数」を用いて判定する。

 帝国データバンクの調査では、2020年度の「有利子負債月商倍率」が5.0倍となり、前年の4.2倍から拡大したとのレポートがあった。業種によってはコロナ禍での月商倍率の計算方法では異常値が算出されるので、参考にはしにくいだろう。

 貸す側の銀行では、追加融資が可能か否かの判定に重きを置いているのは「債務償還年数」だ。

 有利子負債を年間返済可能原資で除した年数が5年から10年なら正常、10年〜15年なら要注意といったランク付けにも使われている。

 コロナ前のリスケにより、債務過剰の状態にあった企業が、コロナで緊急融資を受け倒産を免れたものの、債務残高は膨れ上がり、結果、コロナ後の返済可能原資がどの程度回復するのか、それを銀行が納得するのかの戦いが今後待ち受ける。

 通常、年間返済可能原資は「税引き後当期利益+減価償却費」で見積もられることが多いが、銀行によっては「税引き後当期利益+減価償却費ー正常運転資金」で償還年数を計算してくれるところもある。
 有利子負債の中に設備資金以外に運転資金も含まれて債務残高に加わっているのだから、事業継続を前提とする以上、正常な運転資金を除いた有利子負債を何年で返済できるかで判定してもらった方が良いに決まっている。

 経営者にとって、今後、更に重要になるのは“「債務償還年数」を頭に入れて融資交渉に臨むことが肝要”ということ。同時に正常な運転資金を把握するためにも、長期未回収の売掛金や不良在庫の残高を正しく把握して、「正常運転資金」の額を、経営者自らが銀行側にプレゼンする姿勢が求められるだろう。

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顧問先の経営者・配偶者が認知症になったら……(2021/05/19)

 2025年には認知症を発症する国民が600万とも700万人とも言われている。高齢者人口約3,600万人の20%近くに達する。会計事務所の顧問先の社長、配偶者で高齢者数が100人とすると、約20人の認知症を発症した経営者及び配偶者といった現実が近づいている。

 すでに銀行では、「認知症になった場合の金融資産の管理」について、銀行員に「シニア実務検定」試験を受けるように促しているところもある。認知判断能力や身体能力が低下してきた高齢者との銀行取引を行う上での実務対応力を問うた試験のようだ。

 認知症になった人の財産の管理は、「後見人制度」で対応できるが、家族が後見人になりにくかったり、継続的に報酬が発生するので、制度ができて相当の時間が経過したが、浸透はしていない。
 経営者や配偶者の意思確認が正常に働く段階では、「家族信託」で認知症発症後の財産の管理運用を定めておくことも可能になったが、法律的知見が必要であったりコンサルする専門家も少なかったりで、現時点での家族信託契約が公正証書として保管されているのが、推定で数万件までに達していないようだ。

 税理士や会計士が中心になって設立された「一般社団法人 家族信託普及協会」の発足人の多くは相続・資産税対策の専門家で、同業の士業を会員募集してセミナー・研修を行っているが、本来の目的は「家族信託の事例」を集めることにあると思われる。金融資産・不動産・同族会社の株式等々の管理運用の信託組成事例を多く募り、中でも会計事務所の大半の顧客である同族会社の経営者の認知症発症事前対策に使えるからである。

 ファミトラというベンチャーが、先日2億円超の資金調達を行って、家族信託のIT化を推し進めている。
 全ての考えうる事案に対して家族会議を頻繁に開き、信託契約を文書化するには半年近くの時間を要し、当然、専門家への報酬も高くなる。

 ファミトラは「認知症時の資産凍結」に絞って一定のテンプレートを作成し、顧客へのヒアリングを通じて信託組成する仕組みを販売する。最大の売りは、信託組成時の報酬が49,800円からというものであろう。
 東大工学部と楽天出身の創業者に弁護士が参加して、税理士の顧客層に新規参入してくる。
 常陽銀行もファミトラと業務提携を発表した。銀行の顧客にファミトラの家族信託サービスを提供する。

 クラウドサインが世に出て急速に企業に普及したように、ファミトラの家族信託サービスのテンプレートが増えて従来の司法書士や行政書士の業務を脅かすことになるだろう。税理士もファミトラの今後の展開を注視しておくべきだろう。

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資金繰りのガンは消費税(2021/05/12)

 先月の16日に「特例猶予の適用状況の最終集計の結果が国税庁から報道された。

 令和3年2月1日までに納期限が到来する国税が対象で、件数は約32万件、税額では約1.5兆円であった。既存の猶予制度(平成30年度)との比較では件数で約8倍、税額で約22倍となった。1件当たりの猶予申請した税額も、特例猶予では約470万円、既存猶予では165万円だった。

 税目別で見ると、消費税が件数ベースで全体の56%で約25万件、税額ベースで約60%の9千億円で、本来なら預り金であるはずの消費税が運転資金として使用され、特例猶予の対象の筆頭になっている。

 今回の緊急事態宣言で特例猶予の再延長の議論も出たようだが、国会議員には消費税は預り金だから等の理由で見送られたようだ

 消費税の毎月納付を原則としていたなら、特例猶予で約6割もの申請は出なかったはずである。現実的に預り金である消費税が運転資金化しているのだから、せめて消費税だけの猶予の再延長が議論されても良いのではないか。

 日本政策金融公庫のコロナ融資の据置期間で6ケ月〜1年とした企業の割合は約33%(中小企業庁)であった。昨年の5〜6月にコロナ融資のピークが来ているから、今年の5〜6月からコロナ融資の返済開始既存融資の返済特例猶予の納付と更に厳しい資金繰りが到来する中小企業も多発するだろう。

 おまけに緊急事態宣言の期間延長で、売上が見えてこない業種では本当に「廃業」が現実味を帯びてくるかもしれない。

 追加融資で乗り切るのか、これ以上の借金は望まないとして市場から撤退するのか。会計事務所の担当者も「個々の回答」が顧問先から期待されている。


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