2024/07/24 大企業の経営人材を活用しよう
2024/07/17 相続放棄の際の注意点
2024/07/10 海外送金のWISEを使ってみよう
2024/07/03 地銀と保証協会がタッグを組むと……
2024/06/26 入金待ちの請求書で資金調達する
2024/06/19 大手ゼネコンの完成工事の粗利益がマイナスになっていた
2024/06/12 相当厳しい社会保険料徴収の実態

大企業の経営人材を活用しよう(2024/07/24)

 労働市場において「人」に関わる2つの課題が同時並行的に動いている。

 1つ目は「人手不足倒産」が過去最多ペースで建設・物流業を主に進んでいる。

 2つ目は「中堅・中小企業の経営人材のマッチング」である。

 ビズリーチを運営するビジョナル(株)の2024年7月期第三四半期決算短信を見ると

  1. 2024年7月期連結売上高の予測値が664億円(前年同期比18.0%増)
  2. 同様に経常利益予測値が178億円(前年同期比23.8%増)

と絶好調の業績である。しかし、こうした人材紹介会社のマッチング時の手数料は採用時の報酬の30〜40%が相場となっている。中小企業には負担が重いコストでもあり、人材の目利き力も必要になってくる。

 2021年10月から金融庁の補助事業として本格的に開始した「地域経済活性化支援(REVIC)」に構築した大企業人材の仲介プラットフォーム(レビキャリ)が活性化してきた。レビキャリの仕組みは

  1. 大企業(資本金10億以上)の勤務者若しくはOBが求職者として登録
  2. 地域の中小企業を知る地域金融機関が広報・マッチングの役割を持ち
  3. 経営人材を求める中堅・中小企業が求人登録をする

 2024年3月末のレビキャリの実績(累計値・地域経済活性化支援機構公表)は

  1. 大企業の登録者数:2,889人(前年比185%)
  2. 登録大企業数:99社
  3. 登録求人票数:1,874件
  4. マッチング件数:72件

マッチング件数の推移を見ると2023/3月期で17件、2023/9月期で35件で2023/10月から2024/3月の半年で倍増になっている。

 大企業人材の採用となると給与の格差のハードルが高いが、この事業により

  1. 転籍での採用だと最大500万円の補助金
  2. 兼業・副業・出向の形態の採用の場合の補助金は最大200万円

 の給付金を、採用企業は受給できる

 レビキャリの運営で最も重要な役割を果たす地域金融機関は、2024年6月20日現在で

  1. 地銀:62社
  2. 第二地銀:33社
  3. 信用金庫:34社
  4. 信用組合:2社

 合計131社が登録している。国の事業なので手数料は無料である。

 登録金融機関に自社が求める経営人材の詳細を作成し相談してみるとよい。

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相続放棄の際の注意点(2024/07/17)

 司法統計年報家事編に「相続の放棄の申述の受理」件数の推移が記載されている。令和4年をみると

  平成27 28 29 30 令和元 2 3 4 5
件数 189 197 205 215 225 234 251 260 282

 毎年、相続放棄の申述件数が増加し、申述したものの却下されたのは0.2%程度というから、相続放棄したほうがベストと考える相続人が増えているようである。

 相続放棄は「相続の開始を知った日から3ケ月以内」に行うのは周知のことであるが

  1. 長男とか親とか特定の相続人に財産を引き継がせるため他の相続人は相続放棄をする
  2. 単にプラスの財産よりマイナスの財産が大きいので相続の放棄をする

 2. の場合で最近問題になっているのが空き家相続であろう。

 昨年の4月から施行された民法940条には

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない

と定められている。

 「占有している……」と条文にあるので、相続人が実際に住んでいた実家を相続放棄したといったケースでは、相続放棄後も実家の保存・管理義務が残るとされ、空き家の「定期清掃」「定期点検」「安全対策」等の行動を求められる。

 一方、相続人が都市部に住んでいて田舎の実家を相続放棄する分には、後位の相続人若しくは相続清算人に引き継げば、空き家の管理・保存義務はなくなる。

 次に被相続人が負っていた連帯保証債務がプラスの財産よりも多い場合は相続放棄する方が望ましいが、被相続人が負っている債務の連帯保証人が第三者(取引先・知人)の場合に相続人が相続放棄すると、第三者に債権者から債務の履行を求められ、第三者に迷惑をかけることになり、人間関係に溝ができることにもなる。

 相続放棄は、時には相続人の生活の安定に必要なことであるが、放棄後も諸課題に注視しておく必要がある。

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海外送金のWISEを使ってみよう(2024/07/10)
  • 送金取扱量:570億ポンド(2023年前半6ヶ月 約10兆円)
  • 収益:6億5,600万ポンド(2023年前半6ヶ月 約1,200億円)
  • 顧客数(全世界):1,000万人(1年以内に送金を行った顧客の実数)
  • 従業員(全世界):5,000人
  • 株式上場先:ロンドン証券取引所
  • 時価総額:90億ポンド(2023年12月末時点 約1兆6,000億円 ロンドン証取52位)
[出典]FinTech Journal  FINOLABコラム

 上記の数値は、昨年12月に来日した英国のフィンテック企業WISEの経営者のスピーチの原稿を参照している。

 同社は2011年英国で設立し、日本法人はワイズ・ペイメンツ・ジャパン(株)で資金移動業者としての認可を受けている。

 ワイズの海外送金の最大のポイントは

  1. 送金手数料のみ
  2. 為替手数料は0

 例えば、100万円を米国の取引先の口座に送金すると、受取人の受取額は(現時点の為替レート)

  1. ワイズだと6180.95ドル
  2. 三菱UFJ銀行だと6137.95ドル

で、43ドルの差が生じる。これは送金手数料はほぼ同額であるものの、為替手数料が三菱UFJ銀行だと上乗せされるので、この部分で海外送金の受取人の受取額が減少することになる。

 法人でもワイズ口座を利用することで法人の国際取引や海外送金手続きをスムーズに行うことができる。

 法人口座を作成するには

  1. ワイズの公式WEBSITEにアクセスし、法人アカウントを取得する
  2. 審査を終えると法人口座が作成される
  3. 法人口座に必要な口座番号や支店コードなどの情報を取得し、クレジットカードと紐づけもできる

 海外送金はSWIFTコードを用い、送金国銀行→中継国銀行→受取国銀行の流れで行うことが一般的であったが、手数料が高くなることと、送金→受取までの時間がかかるのが難点だった。ワイズはフィンテック技術を駆使して「中継」を抜くことで、海外送金できる仕組みを作って急成長した。

 個人もオンラインで簡単にアカウントを取得でき、少額送金も受取人の受取額を最大化して使用できるようになった。

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地銀と保証協会がタッグを組むと……(2024/07/03)

 帝国データバンクによると5月度の企業倒産件数は1,016件になった。12年ぶりに1,000件の大台を超え、前年同月より322件増加している。増加数はリーマンショック直後の337件に次ぐ2番目の多さだった。

 中小企業向け資金繰り支援について、中小企業庁は2024年6月末で

  1. コロナセーフティネット保証4号
  2. コロナ借換保証

を原則終了させ、経営改善・再生支援に軸足を置いた資金繰り支援に転換する方針を出した。こうした支援の手から漏れる企業数が一定数出ることは、承知の上での決定である。

 ドル円が160円を再度突破し、借入金利も上昇しつつある経営環境で、年後半に向けて企業倒産は増加速度を増し、1万件(1-5月は4,080件)を超えることは確実になるであろう。

 6月27日の日経新聞に「北国銀行、石川県信保協と顧客情報一部共有 審査迅速に」の見出しで、2025年前半をめどに北國銀行の顧客情報管理(CRM)の一部に、石川県保証協会のアクセスを可能にするとの報道があった。

 個人情報も絡むのでアクセス可能な範囲を協議中とのことだが、実現すれば

  1. 協会は、保証付き融資の審査の迅速化が可能になる
  2. 銀行は保証協会へ提出する資料等が少なくなり、業務の効率化が進む
  3. 協会は、銀行の取引先に対する企業支援の姿勢をうかがえる
  4. 銀行の支援が高まれば、代位弁済の可能性が低くなる

 DXで地銀の先端を走る北國銀行は数年前から保証協会との連携を見込んで活動しており、保証協会に関する事務作業が軽減すれば、その分、取引先支援に活動時間を割ける。

 コロナ以降、中小・小規模企業に「金を入れる」政策一辺倒から、「利益を生む」「返済原資を伴走して獲得する」方向へ保証協会も支援の在り方が変わってきた。

 2024年5月度の保証承諾金額は前年同月比で113.7%(全国信用保証協会)の伸びに対して、北國銀行の5月度の前年同月比は306.7%になり、石川県保証協会との連携がスムーズに働いているようだ。

 今後は各地域の保証協会も、この「石川モデル」を参考にした「協会+地銀・信金のタッグ」で中小・小規模企業の経営支援サービスが強化されてくるだろう。

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入金待ちの請求書で資金調達する(2024/06/26)

 OLTAクラウドファクタリングがOEM提携する金融機関が2024年4月で37行になった。地銀27行、信用金庫10庫が、顧客紹介して、OLTAのシステムを使って売掛金の買取を行っている。すでにファクタリングで買い取った債権の累計は1,000億円を超えるという。

 中小企業が緊急に資金を必要とするときに、銀行融資・ビジネスローン等の方法がある。この方法だと借り手側の信用状況が審査されることになり、財務状況が好転しない借り手は融資手段での資金調達は難しくなるし、調達までの時間も必要になる。

 得意先との取引で発生した「入金待ちの請求書」である売掛金は、取引先の信用状況を買取会社(OLTA)が審査するので、売掛債権の売り手側の財務状況が悪くても資金調達手段の一つの有効策になりうる。

 OLTAクラウドファクタリングの特徴は

  1. 利便性の向上:
    OLTAのクラウドファクタリングは、インターネット上で申し込みから現金振込まで完結できる。ファクタリング会社を訪問する手間がなく、忙しい経営者にとって便利だ
  2. 買取額の上限・下限がない:
    少額から高額まで、金額に関係なく申し込みが可能である
  3. 取引先に通知されない:
    OLTAのファクタリングは「2社ファクタリング」であり、相手に請求書の現金化を知られることはない
  4. 手数料が安い:
    OLTAのクラウドファクタリングの手数料(2〜9%)は低く設定されている
  5. 最短で即日振込:
    審査が早いため、提出書類等に不備がなければ最短で即日に現金を受け取ることができる

 2022年度の中小企業白書で「新たなオルタナティブ・ファイナンス(補完金融)」としてOLTAクラウドファクタリングが取り上げられていて、今後、さらに利用が進むのではないか。

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大手ゼネコンの完成工事の粗利益がマイナスになっていた(2024/06/19)

 帝国データバンクの「建設業倒産動向調査」によると、2023年に発生した建設業者の倒産件数は1,671件で、前年比38.8%増となった。大口の倒産を除外した実質の負債額は1件あたり約8,900万円と、小規模建設業者の倒産が急増しているようだ。資材高騰と人手不足で、これまでにない建設コストの上昇と過剰債務が重なったことが、最大の要因である。

 実際に、日本を代表する大手建設会社の清水建設大成建設の2024年3月の単体決算の中身などを見ると

(建築事業のみ、 単位:億円)
  当期完成工事総利益 前期完成工事総利益 増減
清水建設 ▲74 746 ▲820
大成建設 ▲105 358 ▲463

 両社とも完成工事原価>完成工事高で、完成工事総利益は赤字である。

 工事損失引当金の計上も

(単位:億円)
  当期工事損失引当金 前期工事損失引当金 増減
清水建設 1,247 647 600
大成建設 960 474 486

 当期で損失を見積もった引当金も、前期比でほぼ倍増となっている。

 清水建設は森ビルの大型プロジェクト「麻布台ヒルズ」の施工を請け負っている。赤字を補填するために投資有価証券の売却も積極的に行った。

(単位:億円)
  当期有価証券売却益 前期有価証券売却益 増減
清水建設 550 188 362
大成建設 174 23 151

 大成建設は土木の総利益が693億円あり、営業利益の赤字は免れたが、清水建設は上場来初めての営業損失を計上することとなった。

 建設業は下請け・孫下請けの中小企業も多く、よほどの構造改革をしないと、今後も中小・零細の建設業の倒産は更に急増するだろう。同時に建築発注する側も工事期間遅延やコスト増に対応していく必要がある。

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相当厳しい社会保険料徴収の実態(2024/06/12)

 日本年金機構の「令和4年度業務実績報告書」に社会保険料の滞納に関する記述がある。

  1. 厚生年金保険の徴収決定額345,889億円で、前年比6,740億円の増加
  2. 同上の収納未済額は5,071億円で、前年比308億円の減少
  3. 協会管掌健康保険料も対前年比で1,132億円増加しているが、収納未済額は43億円の減少

となった。

 結果、滞納事業所数は令和4年度末で140,811事業所となり、適用事業所に占める滞納事業所の割合は5.2%で前年比で0.5%減少した。この背景には「職権による換価の猶予」の適用を受けた事業所が42,926事業所に上り、前年比で13,671事業所増加した。要は行政指導で1年以内の滞納額の分割払いの計画書を提出させられているのだ。

 申請による換価猶予の事業所3,001事業所を含む法定猶予事業所数は46,150件で、内、新規発生保険料以上の納付をした事業所は42,926件に達し全体の93%を占め、前年比で52%改善している。

 毎月徴収される社会保険料にプラスして過去の滞納した社会保険料の分割払い分も含めての納付を行った事業所が全体の93%に達したというのだから、相当に厳しい取り立てだったに違いない。

 それでも滞納せざるを得なかった事業所に待っているのは「差押処分」で、過去4年間の差押執行事業所は

  令和4年度 令和3年度 令和2年度 令和元年度
差押執行事業所数 27,784 6,781 3,357 33,142

となり、完全にコロナ前の水準に戻った。

 東京商工リサーチの調査によると、2024年1月-5月「税金(社会保険料含む)滞納」倒産が81件と、前年同期の3倍に急増し、年間ペースでは滞納による倒産が過去最多ペースになると警告している。滞納事業所は早めに徴収機関に相談し、誠意ある分割納付計画を出すべきである。

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