
- 2026/08/04 高齢の経営者及び小規模事業所のDXが進まない理由
- 2026/07/22 資金繰りの緊急度に応じたWeb完結の金融サービス
- 2026/07/07 AI自動記帳サービスが会計業界を変える
- 2026/06/23 日本政策金融公庫の決算から読み取る中小企業向け融資
- 2026/06/09 弥生の記帳代行支援サービスが補助金対象に
先だって、知り合いの経営者が、次のように語った。
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このように、デジタルサービスの利用経験や知識には、当然、個人差がある。会計事務所でも、昔からの顧問先では経営者の高齢化が進んでいたり、「うちは小規模だからDXなんて……」「DXを取り入れて、どんなメリットがあるの?」との反論をもらうこともあろう。
こうした類の顧問先で、業務にDXを普及させるには、業務の一部を取り出し、その部分を軸に最小単位のDXを採用してもらう方法も検討すべきである。
例えば、給与明細だけ電子化する事案を取り上げてみよう。紙の手渡しを廃止すると、
- 給与担当者の封入作業や、紛失による再発行等の業務負荷が減り、
- 従業員はスマホやPCで明細を見ることができ、過去の給与明細も瞬時に把握できる
といった具合で、双方にメリットが感じられる。加えて、会計事務所にとっても、給与仕訳や年末調整等の業務時間の減少につながる。
ところが、給与明細だけ電子化したいのに、給与ソフト変更もセットとなると、導入が止まる。給与ソフトはそのまま、給与明細だけ電子化するという最小単位のDXを提案することが、先決になる。
そこで給与明細だけ電子化できる外部サービスを使うことも必要になる。例えば、
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Web給与明細(オフィスステーション)
- 利用コストは、従業員21名以上の場合、1人あたり年間660円(月額55円・税込)
- 現在の利用者数は55,000社(同会社ホームページより)
- 現在の給与ソフトからCSV出力→アップロード→従業員へ配信という最小限のDXで済む
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他にも
- MyKomonのWEB明細
- マネーフォワード クラウド給与の給与明細機能
- LINE WORKSと給与ソフトとの連携通知機能
- ジョブカン給与計算の給与明細機能
顧問先にも、その従業員にも、直接的なメリットを感じられてこそ、DXは進む。普及のポイントは、最小単位のDXの提案に尽きる。
資金繰りに窮している経営者は非常に焦っていることが多いため、まずは「いつまでに、いくら必要なのか」を確認しよう。同時に、Webで完結する各金融機関の融資などのサービスを知っておこう。
@ 数営業日以内の支払いがマズい
- 三菱UFJ銀行の「Biz LENDING」(最短2営業日・最大1,000万円)
- GMOあおぞらネット銀行の「あんしんワイド」(融資枠型借入れ・最大1,000万円)
- PayPay銀行「ビジネスローン」(最大1,000万円)
これらは必要書類や口座開設の要否が異なる。本人確認書類や入出金明細等を求められるほか、審査の過程で決算書等の提出を求められる場合もある。
Web申込時に入力・アップロードできるよう、必要な情報や書類を準備しておこう。
A 来月の支払いに備えて手元資金を温存したい
- 手元資金はあるが、運転資金を温存しておきたい……というときは
- SMBCの中小企業向け法人口座「Trunk(トランク)」による請求書カード払い
- 請求書をカードで支払うことで、カード利用代金の支払いまで資金流出を最大60日間先送りできる
- メインバンクがあってもカードを作っておくことは有用になる
B 中長期で資金繰りを立て直したい
- PayPay銀行の事業性融資(保証協会付融資)は、24時間365日、来店不要で申込みが可能
- 事前審査は最短で翌営業日
- 融資額は最大で8,000万円(利用する保証制度や審査結果による)
- 保証協会への申請を含め、手続きをオンラインで進められる
- 現時点での利用可能な地域は東京都・神奈川県で、対象地域内に本店または事業所等があり、事業を営んでいることなどが条件となる
ただし、いずれのサービスにも所定の審査があり、「最短」とされる日数で必ず借入れや利用ができるわけではない。資金が必要になる前に、口座開設や融資枠の設定などを進めておくことが重要になる。
[参考]
三菱UFJ銀行「Biz LENDING」
GMOあおぞらネット銀行「あんしんワイド」
三井住友銀行「Trunk 請求書支払」
PayPay銀行「ビジネスローン(法人向け)」
PayPay銀行「事業性融資(保証協会付融資)」
AI自動記帳サービスの開発・提供の「tofu」(トーフ)がfreee会計とのAPI連携を発表した。
「tofu」は、領収書・請求書・銀行通帳などの書類をAIが自動で読み取り、仕訳作成までを一気通貫で行うAI自動記帳サービスで、今回のAPI連携により、freee会計で使用している勘定科目などの各種マスタ情報や過去の取引データを、tofuへ連携できるようになった。
tofuとfreeeの連携の全体像を示すと
- 顧問先の領収書・請求書・通帳・クレジットカード明細等をtofuにアップロード
- tofuがOCR+AIで内容を読み取り、仕訳を自動生成
- tofuがAPI連携によりfreee会計と連携する
- freee上でAIが作成した仕訳データを、担当者がレビューする
連携の技術的な仕組みは、
- tofu → freee はAPI連携
- CSVインポートではなく、会計ソフト連携によりデータを反映する
- freeeの勘定科目や税区分などのマスタ情報をtofuへ同期する
- tofu側でAIが仕訳を生成するため、freee側で自動仕訳ルールを設定しなくても運用できる
- freeeのマスタ情報をもとに仕訳データを作成する
従来、領収書を見て、科目を判断して、入力作業を行って、税区分を選んで、摘要を入力して、その後の月次チェックの段取りだったものが、AI導入後は
- 顧問先若しくは事務所で証憑をアップロードする
- tofuが仕訳をつくる
- freeeへ連携する
- 担当者はAIが作成した仕訳をレビューする
の手順になってくる。
tofuはAIで仕訳を作るが、経費判定や税務判断、例外的な取引の確認は人間が行うので、真の相棒となってくる。これが普及すれば、これが普及すれば、会計事務所は少人数でも多くの顧問先を担当できるようになる。職員数では小規模でも、顧問先数では大規模な事務所が出現することは確実であろう。
[参考]
freeeアプリストア「tofu」
日本政策金融公庫の令和8年3月期決算の概要が公表されている。
損益計算書を見ると経常損失が2,925億円となり前期比918億円の損失増となった。損失の最大の要因は公庫の与信関係費用の増加によるもので、令和8年3月期の貸倒引当金繰入額は2,948億円の計上となった。
同期のリスク管理債権のうち、貸出条件緩和債権の状況をみると、
■ 貸出条件緩和債権額(いわゆるリスケ債権) (単位:百万円)
| 令和7年3月期 | 令和8年3月期 | |
|---|---|---|
| 国民生活事業(従来の国民金融公庫) | 1,160,316 | 1,243,238 |
| 農林水産事業 | 191,593 | 202,774 |
| 中小企業事業 | 160,146 | 169,458 |
特に小規模事業者向け融資を担う国民生活事業では、与信関係費用の増加が顕著であり、公庫の収益環境悪化の要因になっている。
結果として、今後の中小企業向け融資について考えられるのは、
- 審査が厳格化される(特に返済能力のチェック)
- 過去の返済遅延、条件変更歴があれば要注意
- 融資対象の選別が進む
- 創業、新事業、省エネ設備投資、民間との協調融資、事業承継等は優遇されやすい
- 赤字補填目的の追加融資、返済計画が曖昧な借り換え等は審査に通りにくくなる
- 民間金融機関との協調が前提となる
- 「公庫の単独融資」 → 「銀行+公庫の協調融資」 へシフトしていく
借りる側の中小企業は、
- 銀行との定期面談を行う
- 事業計画(売り上げの根拠、コスト削減の実効性)を共有しておく
- モニタリング体制を整備しておく
などが、融資の可否に直結することが想定される。顧問税理士の力量が問われていく。
[参考]日本政策金融公庫「IR情報」
弥生の記帳代行支援サービスが、デジタル化・AI導入補助金の対象ツールとして認定された。
同サービスは、紙証憑のスキャン → データ化 → 自動仕訳 → 弥生会計AEでの確認までを一気通貫で外部化できるため、記帳代行の工数を大幅に削減できるサービスである。特に「証憑データ化サービス(99.9%精度)」と「口座連携ツール」が強力で、「あらゆる顧問先の記帳代行業務を効率化できます」と、弥生のホームページで訴求されている。
同サービスが補助金の対象ツールとして認定されたのは、次の点で補助金の趣旨に合致するサービスであることが評価されたものと思われる。
- 中小企業・会計事務所の労働生産性の向上
- インボイス制度・電子帳簿保存への対応支援
- バックオフィス業務のデジタル化
補助金の対象要件を満たす場合、利用料金負担を大きく軽減できる可能性がある。
弥生が公表している試算では、15顧問先(各65明細)で利用した場合の割引適用価格(今後2年間限りの値引き)は17,200円となる。さらに、補助金の対象要件を満たし、申請が採択された場合には、実質負担額は中小企業で4,300円(利用料の25%)となる。小規模事業者の場合は3,440円(利用料の20%)で、実質80%の負担軽減となる。
これで
- 経理担当者がいない(採用できない)小規模事業者が
- 会計事務所に証憑を紙ベースで送るだけ、渡すだけで
- 記帳代行の効率化が図れる。
会計事務所サイドからすると、外部の記帳代行支援サービスを活用することで入力負荷を軽減できれば、本来業務である経理内容のチェックや試算表の早期提示、決算書の説明など、顧問先への付加価値業務により多くの時間を充てることができる。結果として、経営者の数字に対する理解向上につながり、金融機関に対する説明力や決算書の信頼性向上にもつながる可能性がある。
一方で「自計化」を促進することも重要であるが、小規模事業者やアーリーステージにある新設企業等の経営者が、経理業務にとらわれることなく商品開発・営業・製品・サービスの改善やコストダウン等に注力できる環境を提案することも、重要ではないだろうか。その意味でも弥生の記帳代行支援サービスは、中小企業経営者及び会計事務所にも競争力をもたらすことになるかもしれない。























