2022/08/10 ゾンビ企業を定量的な定義で考察すると……
2022/08/03 敗者復活のための資金調達
2022/07/27 税理士ができる伴走型支援
2022/07/20 中小企業は大手の傘下に加わるか、廃業しかない……
2022/07/13 スタートアップに強い会計事務所が望まれる
2022/07/06 認定支援機関別の事業再構築の採択率
2022/06/29 顧問先の価格転嫁率を知ってますか?

ゾンビ企業を定量的な定義で考察すると……(2022/08/10)

 2022年7月の帝国データバンク(TDB)の特別企画「利払いの負担を事業利益で賄えない『ゾンビ企業』の現状分析」を見ると

1.ゾンビ企業の定義(国際決済銀行(BIS)の基準で算定)と推計

  • 定義:3年以上に渡ってインタレストカバレッジ・レシオ(ICR)が1未満、かつ、設立10年以上
  • TDBが保有する上記2つを充たす企業数は106,918社
  • うち、3年連続でICRが1未満の企業数は12,037社
  • 結果、ゾンビ企業の割合は11.3%となった
  • 経営実態の把握を実地で確認しているTDBが有する企業数は、2020年度で146.6万社
  • 先ほどのゾンビ企業割合11.3%で算出すると、ゾンビ企業数は16.5万社

2.ゾンビ企業の特性

  • 業種別でみると建設(34.3%)、製造(20.0%)、卸売(18.9%)が上位
  • 従業員別では5人以下(31.0%)、6〜20人(36.9%)、21〜50人(19.5%)が上位
  • コロナ関連融資を借りた企業が全体の52.6%に対して、ゾンビ企業は79.6%が借りている
  • 今後の返済に不安があるとするゾンビ企業は、ゾンビ企業全体の15.5%

 ICRは(営業利益+受取利息)/支払利息・割引料で計算されるので、この値が1未満ということは

  • 今の低金利時代ですら支払利息以上の営業利益がない
  • コロナ融資の返済が始まり、ゼロ金利がなくなるとさらにICRは悪化する
  • 結果、破綻懸念とされる債務償還年数が20年を超えるゾンビ企業が大量出現するかも!?

 再々のリスケや返済のための追加融資など、ゾンビ企業を延命させる手は打ってきた。さらに延命策を講じることが、中小企業対策となるのであろうか。そろそろ結論を出さねば。

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敗者復活のための資金調達(2022/08/03)

 6月22日に経産省から刊行された「スタートアップ支援策一覧」は、補助金・融資等スタートアップの成長を支える69項目の支援策をまとめた冊子である。

 項目の筆頭に紹介されているのが、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)の「新規開業支援資金」である。ここに記載されたURLをたどって日本公庫のサイトへ飛べば、廃業歴等があり、創業に再チャレンジする場合には、「新規開業資金(再挑戦支援関連)/ 再挑戦支援資金」が利用できることがわかる。

 この再挑戦支援資金の利用対象者は、事業開始後おおむね7年以内で、下記3つの条件をすべて満たす必要がある。

  1. 廃業歴等を有する個人または廃業歴等を有する経営者が営む法人である
  2. 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みがあること
  3. 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること

 日本公庫の国民生活事業(個人事業者、小規模企業が対象)の再挑戦支援融資の限度額は7,200万円(うち運転資金4,800万円)、返済期間は15〜20年(据置2年)である。

 過去に事業に失敗した人が、未経験の分野での再挑戦計画を銀行員に納得させようとしても、これはハードルが高い。むしろ体験してきた「市場」で、今後の経営環境の中で、獲得したい「顧客」「商品」「販路」で再挑戦の事業計画を策定し、既存の負債も確実に返済をする姿勢・見通しを持って、再挑戦のための資金調達を検討してみてはどうだろう。

 スタートアップの支援も国として重要なことであるが、過去、事業に失敗して人も「再びの創業」の支援に力を入れていくことも必要なことだ。再挑戦支援資金は意外に知られていないので、再度見直してみてはいかがだろう

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税理士ができる伴走型支援(2022/07/27)

 帝国データバンクの「2021年の建設業者の倒産・業界動向調査」(2022年1月公表)によると、建設業の危険度状況を現わす指標として、「減収率」「有利子月商倍率」を用いて、実際の倒産企業の実態を分析している。

  • @有利子月商倍率5.87倍以上の企業が、全体の26.1%を占めた
  • A減収26%以上の企業が、全体の13.5%を占めた
  • B@及びAの双方に該当する企業は、全体の5.7%となった
  • C帝国データバンクはBの企業群を「建設業の破綻リスク先」と定義づけ
  • D破綻リスク先として推計される企業数を約26,000社とした
  • E2018年の破綻リスク先数が約14,600社で、3年前と比較して倍増となった

 ピラミッド型の下請け構造を形成する建設業界で、主要な上場ゼネコンの多くが、2022年3月期決算において減収減益に陥り、その後のコロナ感染大爆発と建設資材の高騰によって、来期決算の見通しは全く良くない状況である。

 したがって、下請けの中小・零細建設業者の元請けに対する「価格転嫁」は、国や政府が音頭を取っても、現実的には厳しいと考えるのが普通であろう。

 下請けを嫌い、自ら元請けとなって住宅・店舗などの建設受注形態に切り替えた企業も、輸入木材の高騰(ウッドショック)や海外で製造する「設備品」の不足・納期遅延などが常態化しつつあり

  • 施主側の工事先送りや新築計画の中断のリスク
  • 着工後の資材価格上昇分を施主に転嫁できないリスク

が顕在化し、今後は更に厳しい経営を強いられることになるであろう。

中小建設業者の財務状況を経営者自らが明確に認識し、取引銀行を納得させる今後の計画を丁寧に説明できる「経営者の姿勢」が、更に求められることになってくる。
 会計人は建設関連の顧問先の過去3〜5年の「減収率」「有利子借入金月商倍率」を早急にグラフ化し、経営者の参考資料として提供すべき時が来ている。待ったなしだ。

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中小企業は大手の傘下に加わるか、廃業しかない……(2022/07/20)

 経済同友会 櫻田代表幹事の日本テレビのインタビューにおける発言である。

  • 中小企業の数が多すぎる
  • 規模が小さすぎる
  • 生産性、利益率が低すぎる
故に日本の平均賃金の低さを解消するには
  • 中小企業が合併や大手の傘下に加わって「中小企業を脱すること」が必要
  • 賃上げできない利益率の低い中小企業の廃業を促すべき

 櫻田代表幹事はSOMPOホールディングのCEOで、製造業や卸・小売業とは異なる損保販売の経営者である。中小企業の経営者に金融や保険販売の経営者はまずいない。従って傍観者的に「思い切った発言」を可能にしたのかもしれない。

 中小企業の「賃上げ原資」は、確かに生産性・利益率向上のためには確保すべきなのだが

  • 企業物価が高騰しているにも拘わらず、取引先への価格転嫁が進まない現実があり
  • 中小企業、特に同族会社の「不必要な経費」を徹底して削減すること

で、「賃上げ原資」を編み出す努力を促す姿勢を、より前面に出すべきだったのではないかと思えた。

 大手の価格転嫁が進まない原因の一つには、価格転嫁交渉にかかわる現場の人員への評価制度にもある。調達コストを目標に従って削減や現状維持すれば、人事評価で〇がつく企業も少なくはない。

 先日は京都新聞で、一族の女性相談役の報酬が過去34年間で16億円支出されていたことや、私邸の維持管理費が法人から拠出されていた事実が暴露され、メディアの世界でも同族会社の「不必要な経費」の問題が明らかになった

 同族の中小企業でも、勤務実態に乏しい一族社員への報酬や高価な車両の提供、身内間での飲食等々、損金不算入扱いとなる経費を徹底して取り締まっていけば、規模の小さな中小企業でも「賃上げ原資」は確保できるのではないか。

 一方で、来年のインボイス制度を控え、2021年は約37,000社の合同会社が誕生した。多くは雇用が生じない法人格取得のための設立ではあろうが、中小企業の平均賃金を測るには「中小企業の再定義」も必要になるのかもしれない。

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スタートアップに強い会計事務所が望まれる(2022/07/12)

 岸田内閣の骨太の方針「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」(6月に閣議決定)が公表されている。

 年末にかけ、さらに詳細な議論を経て予算化し、来春の通常国会で法案になるので、グランドデザインの中身を吟味しておく必要がある。

 とりわけ大きなテーマとして、「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、スタートアップを5年で10倍増にすることが挙げられている。これだけのスタートアップを育成するには、従来の制度や規制では解決できないことが多く、例えば

  • 創業時に信用保証を受ける場合に経営者の個人保証を不要にする等の制度の見直しとして、「経営者による個人保証を徴求しない創業時の新しい信用保証制度を創設する」とあり、「金融機関が個人保証を徴求しない創業融資の促進措置を講じる」としている。
  • 未上場株のセカンダリーマーケットの整備をあげ、スタートアップが拙速に上場することを強いられないように、非上場のまま時間をかけて成長することができる環境を整備する。具体的には、証券会社が運営する私設取引システムで、プロ投資家向けに非上場株式を取り扱うことを可能にする。

 既存企業についても、スタートアップと連携し、経営資源を成長性・収益性の見込める事業に投入して、新陳代謝を進めていく観点から

  • 事業再構築のための私的整理法制の整備を行う。
  • 中小企業活性化パッケージに基づき、認定支援機関の伴走支援を行うとともに、経営者の退任を原則としない形での事業再生を推進する。

としている。

 起業を志向する者からすれば、雇用者からいきなり起業はハードルが高い。諸外国の成功例から見ても、副業・兼業で「異なるマーケット」や「異なる技術等」を体験・会得し、起業につなげる方法により、「起業による退出確率の低下」という結果を得られている。このため、大企業を中心に副業の禁止解除を求め、副業・兼業を通じて起業する流れを作りたいとしている。

 スタートアップや事業再構築による事業再生が、岸田内閣の唱える「新しい資本主義」の中核に座るようだ。新ルールや規制緩和策をしっかりと注視しておく必要がある。

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認定支援機関別の事業再構築の採択率(2022/07/06)

 支援額も予算規模も過去最大とも言える「事業再構築補助金」の第6回申請受付が、6月30日で終了した。

 過去5回の応募件数、採択件数、採択率の推移を見ると

  応募件数 採択件数 採択率(%)
第1回 22,231 8,016 36.0
第2回 20,800 9,336 44.8
第3回 20,307 9,021 44.4
第4回 19,673 8,810 44.7
第5回 21,035 9,707 46.1

 第5回の認定支援機関別の応募・採択状況を金融機関・士業・民間コンサルのカテゴリーで見ると

認定支援機関 応募件数 採択件数 採択率(%)
地銀 4,018 1,996 49.7
信用金庫 3,519 1,716 48.8
税理士・税理士法人 3,955 1,466 37.0
中小企業診断士 1,506 796 52.9
民間コンサル会社 2,727 1,382 50.7

 金融機関が採択件数の約4割を占めている。

 今後も事業再構築補助金は目玉政策として継続されるだろうが、昨年6月に中小企業庁から、認定支援機関による

  • 強引な営業
  • 高額な成功報酬
  • 補助金入金時でなく採択決定段階での報酬請求

などの問題が表面化し、特に今後の違反行為や悪質な勧誘行為が散見されれば、認定支援機関に対して業務改善命令や認定支援機関取り消しといった処分を行うと注意している。

 8月に第7回応募要領が公表されると思われるが、採択結果に影響を与える要因が「コロナによる既存事業の売上の落ち込みを、新規事業領域でカバーする事業計画」から「原油価格高騰や物価高騰でのコスト増が続く中で、事業領域をどう変化させていくか」に移っていくかもしれない。企業物価上昇が続くという「経営環境の激変」に対して、事業再構築をどのように進めていくかが大きく問われることになる。

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顧問先の価格転嫁率を知ってますか?(2022/06/29)

 6月8日に公開された帝国データバンクの「企業の価格転嫁の動向アンケート」(有効回答企業数1,635社)を見ると、

  1. 仕入コスト上昇分を販売価格やサービス料金に「一定程度価格転嫁できている」との回答が73.3%
  2. 「全く価格転嫁できていない」の回答が15.3%
  3. 価格転嫁の割合を個別に分析すると、
  4. 加重平均した「価格転嫁率」は44.3%で、仕入れコスト100円増に対し販売価格増が約44円という結果になった
  5. 業種別では「運輸・倉庫」の価格転嫁率は19.9%にとどまった。要は、燃料代が100円上がって運賃が20円しか上げられていない状況が明らかになった

 このアンケートが実施されたのは6月3日〜6日である。企業物価指数の上昇度合いを見ると、今後は秋にかけて更に、仕入れコストの上昇が顕著になるだろう。

 自社の商品単位・取引先単位の仕入伝票や見積書・納品書などで、過去1年程度の月別仕入れコスト上昇幅の表を作成して、販売単価やサービス料金単価がどの程度まで転嫁できているか、早急に分析しておく必要があるだろう。

 一定のエビデンスを携えて自社の現状を取引先に説明・交渉できる能力を強化する必要がある。また、このような分析は、融資を受けている取引金融機関に対し、必要に応じて説明する資料にもなる。会計人も「顧問先の価格転嫁率」を知っておくことが重要だ。


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