2022/05/18 顧問先の取引銀行の決算短信を見るべし
2022/05/11 個人破産を回避して、法人の後始末をつける
2022/05/06 引き伸ばしによる資金調達
2022/04/27 歯科医院にものづくり補助金で差別化を提案する
2022/04/20 405事業の見直しで税理士の強みが発揮される
2022/04/13 破産会社の社長破産率
2022/04/06 補助金で顧問先を奪われていないか?

顧問先の取引銀行の決算短信を見るべし(2022/05/18)

 コロナ禍で、地銀への公的資金の注入が始まりそうだ。山形市にある「きらやか銀行」が公的資金申請の検討に入ったとの報道があった。公的資金のコロナ特例の特徴は

  1. 本来の返済期限が15年なのに対し、返済期限は無い
  2. 当該金融機関の収益性や効率性の向上の見込みを特に求めていない
  3. 経営陣の経営責任も求められない

 きらやか銀行(じもとホールディングの完全子会社)について、2022年3月期における決算短信の貸借対照表をみると

  金額(億円)
総資産 13,766
貸出金 9,988
有価証券 2,314
その他有価証券評価差額金 ▲107
純資産の部 565(前期末640)

 有価証券の約74%(1,714億円)を占めるのが「その他の証券」という勘定科目であり、明細は「外国証券」及び「投資信託受益証券」で大半が構成されている。昨年末から始まった米国の金利高騰で債権価格が下落し、日本の多くの地銀において、余剰資金の運用先として外国証券を扱っていたツケ(リスク)が回ってきたようだ

 地銀では、有価証券のうち、外国証券の構成比は平均で37%程度とされている。きらやか銀行のように7割を超えているのは異常といえるのかもしれない。同じホールディングの子会社である仙台銀行も、有価証券に占める外国証券は75%に達しており、その他有価証券評価差額も▲52億円となっている。

 きらやか銀行は、主に山形の中小零細企業に貸付を行い、コロナ禍での企業活動の支援を行ってきた。しかし今回、自己資本の約100億円超を棄損したことは、貸倒損失ではなく、資金運用上の含み損を露呈したものであり、結果として公的資金の申請に至っている。

 ゼロゼロ融資は緊急避難的なやむを得ない措置だったとは言うものの、企業のモラルハザードを生んでしまった部分もある。今回の公的資金申請のコロナ特例も、返済期限なし・経営責任は問わないというのでは、金融機関のモラルハザードを生んでしまうかもしれない。とは言え、資金運用の失敗で自己資本を減少させ、融資先の貸し渋り・貸しはがしが再発するようであれば、公的資金注入も必要悪なのだろう。

 まずは取引銀行について、貸借対照表上の有価証券評価差額金の計上があるのかどうかを、自身の目で確認しておくことは必要であろう。

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個人破産を回避して、法人の後始末をつける(2022/05/11)

 コロナによる実質的な外出制限がなくなり、経済活性化のほうに軸足が戻った感がある。

 一方で、コロナ後の中小企業支援は、「融資」「リスケ」「各種支援金」などの財務的支援から、収益改善による企業再生や「個人破産を伴わない法人破産、廃業」で中小零細企業の過剰債務問題を解決する時期へと移行したのではないか。

 4月1日に「中小企業活性化協議会」が発足した。従来の中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターが統合された組織だ。概して、難度の高い企業再生案件は再生支援協議会が担当し、軽度の案件は経営改善支援センターで改善指導を行ってきたが、コロナ後の過剰債務問題を抱える相当数の中小企業の相談・支援に対応していく必要が生じてきた。

 会社倒産と同時に経営者個人も破産する割合が7割近くあり、経営者保証が個人破産に繋がっている実態が改善されていないことが明らかになった。

 過剰債務に悩む経営者は、個人破産を回避して、法人破産・廃業を認めてもらえるよう、一般債権者や金融機関向けに弁済計画が提示できれば、法人の今後の運営について早期の判断が可能になるかもしれない。こうした判断・決断が遅れることにより、債務者の実質財産価値が棄損し、債権者への被害額が拡大していく。この悪循環を止めなければならないのも、大きな課題となっている。

 中小企業活性化協議会の支援の一つに「再チャレンジ支援」がある。収益改善が見込めなくて、円滑な廃業をして、かつ、個人破産を回避したい経営者向けの支援策である。

 「廃業時における経営者保証ガイドラインの基本的考え方」に保証債務の履行に関する記述がある。「対象債権者は保証人に自由財産を超える保有資産がない等、保証人の保証履行能力の状況によっては、保証人が対象債権者に対し、弁済する金額がない弁済計画(いわゆるゼロ円弁済)もガイドライン上、許容され得ることに留意する」と明確に説明されている。

 また、対象債権者は、華美ではない自宅や一定期間の生活費についても、債務者の申し出により、残存財産に残すことも検討することになっている。

 自己破産すれば5年間はクレジットカードの保有ができなくなり、10年間は住宅ローンも組めない。信用情報のブラックリストにも載る。自由財産は残るが、不都合なことも多い

 「再チャレンジ支援」で専門家の助言を得て
『 既存の法人の廃業 → 個人破産の回避 → 新規事業へのチャレンジ
へと善循環サイクルに戻してみよう。

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引き伸ばしによる資金調達(2022/05/06)

 中小企業や個人事業主にとって、借入、ファクタリング以外の資金調達方法ができたことを知っているだろうか。4月27日から運営開始となった「支払い.com」もその一つであろう。

 カード会社大手のクレディセゾンと新鋭の法人カード運営会社である「UPSIDER」が業務提携して、中小法人・個人事業主向けのクレジットカードを利用した決済サービスを提供する。

 例えば、月末に銀行振り込みをすべき金額が300万円あったとする。

 しかし、手元残高にはそれだけの資金がない。銀行からの新規融資は望めない。売掛債権譲渡も、対象になるものは資金化している……。

 取引先にお願いして、銀行振り込みの時期を遅らせるしかないといった状況に陥ったときに、この「支払い.com」が役に立つかもしれない。

 仕組みは

  1. 「支払い.com」サイトでユーザー登録をする
  2. 銀行振込金額、支払先口座名、支払日などをサイト上に入力
  3. 保有するクレジットカード情報を入力し
  4. カード利用残高の範囲内で即時決済される
  5. 振込人名義は指定できる

 メリットは、クレジットカードの締め日が15日で決済が翌月の30日ならば、月末の銀行振込日からすると最大60日間の支払いの「引き伸ばし」が可能になることにある。

 要はカード利用残額の範囲内で、「支払い.com」で指定した振込人名義で、銀行振込をしてもらって60日後にカード決済するので、ユーザー側は60日間の資金繰りが手当てできるようになる。この利用手数料は一律4%で、ファクタリング手数料よりも安い

 法人ビジネスカードも、利用可能額が500〜1,000万円のものもある。「引き伸ばし」による資金調達方法も検討しておいてもよいのでないか。

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歯科医院にものづくり補助金で差別化を提案する(2022/04/27)

 ものづくり補助金の第10次公募申請の締め切りが、5月11日と迫っている。

 認定支援機関検索にて、ものづくり補助金の採択実績を見ると、愛知県にある個人の会計事務所では、過去の支援した採択実績数が119件ある。うち直近の令和元年〜2年補正では30件が採択されている(採択率64%)が、採択された事業者が歯科医院であるものが5件あった。

 ものづくり補助金というネーミングから製造業中心の補助金と思われがちだが、医療業も患者サービス向上のための設備投資やソフト開発などは対象になる。ただし医療法人の歯科は対象とならないので注意が必要である。

 採択されたA歯科医院の事業計画には「最新型のX線CT診断装置導入による新サービス提供」とある。通常、歯科医院では、パノラマレントゲンで2次元の口腔内の写真を提示されて、問題のある「歯」について説明を受けることが多いが、この事業計画で導入されたCT診断装置は、3次元的な歯科形状で歯根を立体的に見せたり、該当する歯の病変を説明したりできるので、患者サイドでは従来よりも自身の歯の状態が深く理解できる。

 他の歯科医院の採択事例では、3種類のレーザー治療器を導入して、症状にあわせた使い分けで患者の安心感を増す工夫を行い、評価を得ているようなケースもある。

 通常、個人の歯科医院では従業員5人以下が大半だろうから、ものづくり補助金の上限は1,000万円で投資額の2/3が補助される。上記の診断装置も300万〜500万円程度で販売されているので、今回の公募申請で採択されると、自己負担は100万〜150万円で済む。

 事業計画が採択されるには計画期間中に

  • 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が年率で3%以上達成
  • 人件費を年率で1.5%以上の支給

上記要件を満たす事業計画の作成を行えばよい。

 歯科医院を担当する会計人も、この補助金の仕組みを知らない人も多い。6万件を超す歯科医院に補助金を使って、激化する競争に打ち勝つ指導を行う必要があるのではないか。

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405事業の見直しで税理士の強みが発揮される(2022/04/20)

 通称405事業と呼ばれる「経営改善計画策定支援事業」が今月から一部改訂された。認定支援機関である税理士事務所や中小企業に特化したコンサルを行っている民間企業には、支援に伴う補助の増額になるので注目すべきだ。

 経営改善計画策定支援事業とは

  • 事業者である中小企業が
  • 金融支援を伴う経営改善を計画し
  • その計画作成を認定支援機関にて行うことで
  • 必要経費の2/3(上限200万円)を補助する事業

 中小企業庁の認定支援機関検索で、「全国」の「税理士法人・税理士」「民間コンサル企業」が過去行った405事業の支援実績を見ると、平成26年〜令和2年までの7年間累計の実績上位3社は

  • 1位 204件 エクスランド
  • 2位 121件 山田ビジネスコンサル
  • 3位 119件 NBCコンサル

 山田ビジネスコンサル、NBCコンサルは税理士事務所系のコンサル会社で、全国に拠点を持つ大手法人である。エクスランドも中小特化型コンサル会社だ。3万件以上の認定支援機関の大半は税理士、税理士法人であるが、405事業の支援実績が1件以上ある税理士・税理士法人は2,000件未満の状況である。

 4月1日から405事業の見直しがあり、従来の補助対象経費には計画作成費用+モニタリング費用の合計で上限200万円だったのに対して、今後は

  • 計画作成支援費用の2/3(上限200万円)
  • モニタリング費用の2/3(上限100万円)
  • 金融機関交渉費用(バンクミーティング等)の2/3(上限10万円)

に改変される。計画作成だけでも相当の労力が必要なだけに、モニタリングの費用が別途で必要経費に算定できるようになったのは、PLAN→CHECKのCHECK部分について、認定支援機関は重点を置いてほしいという国側、貸し手である金融機関側の要望も強くあったのだろう。

 モニタリングは伴走型支援とも言われているが、顧問先企業への巡回指導、CHECKは税理士事務所では本来業務として導入されているので、補助対象経費の見直しを機に、顧問先に対象となるところがないか、再度チェックする必要があろう。

 今回の見直しでは、過去に405事業の補助金の利用が済んでいる事業者も対象となる。過去の計画作成時には前提になかったコロナの影響・ウクライナ問題での物価変動などで、再度の計画作成支援が必要となっていないかどうか、検討に値する。

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破産会社の社長破産率(2022/04/13)

 中小企業庁が2月17日公表した「今後の間接金融のありかた」について、従来の課題である「経営者保証ガイドライン」の現状報告があり、

  • 民間金融機関の新規融資で経営者保証が外れている新規融資案件の割合は30%
  • 現存する融資契約のうち7割、特に、従業員50人以下の事業者について経営者保証が外れていない

と記されている。

 中小規模の同族会社で「俺の会社」という認識が強いと、融資をする側としては、「会社が倒産したら社長の財産でもって補填してください」と考えるのも当然で、赤字なのに高級外車を乗り回しているようでは、融資申し込み=個人保証になるのは仕方ないのかもしれない。社長保有の土地に会社名義の工場があり賃貸の関係になっている状態では、個人保証は避けられないであろう。

 帝国データバンクの調査によると、2021年の倒産件数は6,015件と前年比で23%減少し、歴史的な倒産件数の低さであった。考えられる要因としては

  • 持続化給付金など、政府による疑似的資本注入があった
  • ゼロゼロ融資などで資金繰り支援を精力的に行ってきた
  • 民間金融機関による既存借入金の再リスケで倒産予防にあたった

 とにかくコロナ禍での支援の大半は、資金繰り支援であり、結果として更に積みあがった借入金残高であり、更に延長された返済期間であった。

 今後の中小企業の経営は

  • 営業キャッシュフローの10倍以内の借入金残高になるような事業計画が作れるか
  • 再々リスケが望めないとすると、新たに返済能力をどう増やすのか

 具体的な対応が必須となる。対応できないとなると事業閉鎖か倒産の道に進む。

 東京商工リサーチの「破産会社の社長破産率」という調査(2020年4月〜2021年3月)では、破産会社の約7割が社長も個人破産をする実態が公表された。

 個人破産だと自由財産は現金99万円までに制限される厳しい現実が待っている。早期に法人と社長個人の資産区分を明確にし、経営者保証を外す努力が求められる。

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補助金で顧問先を奪われていないか?(2022/04/06)

 事業再構築補助金申請第6回の受付が、3月28日から始まっている。

 過去第1回〜第4回の通常枠の申請件数は累計で77,830件に対し、採択された件数は32,317件と、41.5%の採択割合となった。第5回申請の採択結果は6月に公表される予定だ。

 認定経営支援機関検索サイトには

  • 地域
  • 金融機関を除く支援機関の種別(税理士、会計士、中小企業診断士、会議所等)
  • 金融機関の種別(銀行、信用金庫、信用組合等)
  • 支援実績(事業再構築、ものづくり、経営改善、事業継承等)

上記項目のデータベースがあり、検索し、かつ昇順・降順で並べ替えができるシステムになっている。

 この検索サイトで、各都道府県の認定支援機関である地銀、信金、税理士事務所の事業再構築補助金採択件数の「支援実績」を見てみた。

@ 東京都では西武信用金庫(191件)をトップに、実績上位10位までが銀行及び信用金庫で占められていて、税理士事務所では12番目に個人事務所が出てくる。全国的に有名な大事務所も、支援実績は少ない。
A 京都府は中小企業が多い事情もあるが、京都信用金庫が365件のトップで、京都銀行の237件、京都中央信用金庫の224件と続き、税理士事務所のトップは19件となっている。
B 北海道は、銀行、信用金庫で支援機関の認定を受けているのが20行ある。支援実績件数のトップは第二地銀の北洋銀行の240件で、金融機関全体の44%を占めている。税理士事務所のトップでは13件に過ぎない。
C 愛知県も同様に、名古屋銀行をトップに愛知銀行、碧海信金、豊橋信金、岡崎信金と続き、中小企業診断士グループ、法人組織が非金融機関系として目を引く。
D 福岡県は、商工会連合会、商工会議所の支援実績がダントツで、西日本シティ銀行が金融系のトップ、次に診断士系が士業のトップにある。
E 北陸地方は、石川県が北國銀行、富山県が北陸銀行で支援実積の大半を占める。

 最近、地銀の中期経営計画が公表されているが、再編統合の方向よりも単独生き残りを目指すその具体策として、「非金融収入」の割合を大幅に増やす案を提示するところが増えている。中には全体収益の50%まで非金融収益を伸ばすと謳う地銀もある。非金融収益の今後の柱は「コンサル力」強化だという。

 事業再構築の提案は専門性も高く、人材の確保が大きな課題になるが、地域金融機関も地域の税理士事務所も顧客層は同じだ。競合するのか共存するのか、競合するとしたら「勝てる要因」は何か、共存するとしたら「与えられるもの」が何か、税理士事務所も生き残り策を考えねばならない


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