2019/07/17 顧問先社長に知らせておこう〜その2
2019/07/10 顧問先社長に知らせておこう〜その1
2019/07/03 freee社の財務内容に疑問
2019/06/26 士業には逆風か
2019/06/19 地銀のビジネスモデルが変わる…
2019/06/12 早期警戒制度が顧問先に与える影響
2019/06/05 顧問先開拓としての合同会社の位置づけ


顧問先社長に知らせておこう〜その2(2019/07/17)

 金融庁が今年3月に銀行に対し返済猶予の報告義務を休止した後、銀行の個々の判断により、要管理債権の処理がこの3月決算で行われたようだ。

 余力のある地銀はランクダウンさせ引当金を積む決算ができるが、本業の利益減で与信コストが増加した地銀では、更に先行して引当することが難しい。地銀協会が公表している過去5年の不良債権(64行合計)の状況を見ると
  貸出金
(兆円)
不良債権
(億円)
要管理債権
(億円)
業務純益
(億円)
2019年3月 209 36,803 7,575 9,739
2018年3月 201 33,656 6,281 9,463
2017年3月 193 35,965 6,660 10,348
2016年3月 185 38,972 7,391 12,693
2015年3月 179 41,921 8,035 12,817
  1. @ 貸出金は順調に増加しているが、利息収入減で業務純益は減る一方
  2. A 不良債権額も2018年3月期までは減り続けたが、2019年3月期はスルガ銀行問題で増加
 「金融再生法開示債権の保全状況の推移」を見ると、2018年3月期の要管理債権の保全割合は51.6%で、その内訳は担保で37.9%、引当で13.7%だった。

 仮にこの率で2019年3月期の要管理債権7,575億円の保全不足を計算すると、約3,700億円(7,575億円×48.4%)となり、追加担保がなければ全額を引当しなければならない。業務純益は約1兆円近くあるので地銀64行全体では数値的に何ら危機は無いように思えるが、個々の地銀の要管理債権の保全割合と業務純益とのバランスはそれぞれ大きく異なる。

 未だ返済条件の緩和を継続している融資先企業は、取引行の台所事情を十分検討した上で、今後の交渉に臨む必要があるのではないか。


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顧問先社長に知らせておこう〜その1(2019/07/10)

 一般社団法人全国地方銀行協会が6月12日に公表した「加盟する64行の地銀の決算状況」によると、10年前の経常利益8,049億円に対し2018年度(2019年3月期)の経常利益は9,269億円と1,220億円の増益となっている。

 マスコミ報道だと、地銀の約7割が減益決算とか銀行のビジネスモデルが崩壊しているとか、暗い話題に終始しているが、実際の数値で10年前と比較検証してみよう。
項目 2009年度 2018年度 増減
業務粗利益 @ 36,899 32,945 ▲ 3,954
(内 貸出金利息) 29,604 22,636 ▲ 6,968(利益減)
(内 資金調達費用) 4,975 3,096 ▲ 1,879(利益増)
経費A 23,601 22,646 ▲ 415(利益増)
(内 人件費) 11,468 11,349 ▲ 119(利益増)
(内 物件費) 10,950 9,826 ▲ 1,124(利益増)
実質営業利益@-A 13,298 10,299 ▲ 2,999(利益減)
経常利益 8,049 9,269 1,220(利益増)

 日銀のマイナス金利政策が続き、貸出金利息がこの10年間で約7,000億円減少し、個人・企業の預金利息を約2,000億円減少させたが、手数料収入含めても約4,000億円の粗利減少となっている。
 経費は人件費がほとんど変わらず、店舗数は増加しているもののコスト削減で物件費はこの10年で1,100億円の減少、利益増加要因に貢献はしたが、実質の営業利益ベースでは10年前に比して約3,000億円減少した。

 では何故経常利益ベースで約1,200億円の増加となったのか?

 一つの要因は与信コストが10年前と比較して約1,600億円減少している。これも2018年度決算で与信コストが2,880億円計上されているが、約半分はスルガ銀行分である。

 二つ目の要因は株式関係損益が10年前に比して約2,300億円増加していることにある。

 この2つの要因で約4,000億円近くの増益要因が貢献して経常利益増となったものである。

 今後、リスケ先債権が不良債権化することは避けられず、株式の含み益も底を尽きつつある地銀は、再度の再編劇にその名が浮上してくるだろう。顧問先経営者にはメイン行の財務分析をしておくよう促す必要がある。


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freee社の財務内容に疑問(2019/07/03)

 クラウド会計ソフトを提供するfreee社は、非上場企業なのでその財務実態が不明である。

 ただし電子公告により貸借対照表は公表されている。平成29年6月期、平成30年6月期の貸借対照表の気になる勘定科目を記すと以下のとおり(単位 百万円)。
  平成30年6月期 平成29年6月期 増減
株主資本 18 3,598 △3,580
資本剰余金 9,506 9,506 0
利益剰余金 △9,587 △6,007 △3,580
前受収益 871 550 58%増

 freee社は昨年8月にもLINEや三菱UFJ銀行らから65億円の資金調達を行い、創業からの累積資金調達額は161億円に達した。上場したマネーフォワードとは違い、非上場でこれだけの資金調達ができることを示したベンチャー企業でもある。

 ところが損益計算書は非公開なので、売上高の実績が不明のままである。freee社の売上は「課金ユーザ数×月額単価」で大半が決まる。マネーフォワードの平成30年11月期の売上高は約46億円であるが、マネーフォワードの会計・給与等のソフト関連の売上比率は約6割であるので、27億円程度になる。会計・給与等のソフト分野でのシェアが同等だとするとfreee社の売上も平成30年度決算で約30億円程度との推察も可能かもしれない。

 前受収益をソフト利用料の年額課金の前受と見ると、前受収益が前年比約6割増なので、課金ユーザー数も同程度の伸びと見ることもできる。さすれば平成31年6月期では約50億程度の売上になっているかもしれない。マネーフォワードの平成31年11月期の売上予測は前期比55〜65%増としている(決算説明会資料より)。

 弥生の平成31年1月期の決算公告では、売上高173億円(前期比102%)、経常利益47億円である。freee社が順調に成長し、弥生並みの売上高に到達するには、50%成長を後3年は続けなければならない。現状では単年で35億円もの損失を出し先行投資をしているが、マネーフォワードも上場後も赤字決算が続いている中で、勝ち目はあるのだろうかという疑問も出てくる。


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士業には逆風か(2019/06/26)

 デジタル行政推進法の改正が決まった。今後の目標は下記原則に基づくことになる。
  1. @ 手続きを原則デジタル化する
  2. A 同じ手続きを1回で済ませる
  3. B 手続きを1ヶ所で済ませる
 既にA、Bの原則を守る行政サービスを実施している自治体が多く存在していることに、気づいているだろうか。「ご遺族支援コーナー」や「おくやみコーナー」という名称で実施されている。家族の死亡に伴って遺族が行う各種手続きは10数種類に及ぶ。同じ役所の複数の所管課を回って手続きを行うのは、個人には荷が重いものであった。相続手続き支援サービスが士業のビジネスにもなった背景でもあった。

 2016年5月に大分県の別府市で開設された「おくやみコーナー」は
  1. @ 遺族が市へ電話で予約
  2. A 市の職員が市のデーターベースで死亡者の必要な手続きを確認
  3. B 職員が手続きが必要な所管課へ連絡
  4. C 必要な提出書類にあらかじめ氏名・住所・生年月日等を自動で印字しておく
  5. D 遺族に来所してもらい職員の案内ですべての手続きを完成させる
というワンストップサービスを市民に提供している。アナログな手法も用いているが、市民の支持を得て、全国から自治体の視察もある。こうした行政サービスの輪が広がりつつある。

 「おくやみコーナー」の名称を掲げている自治体は
  1. 三重県/松阪市
  2. 石川県/小松市
  3. 兵庫県/神戸市全区
  4. 愛媛県/新居浜市
「遺族支援コーナー」を設置しているのが
  1. 神奈川県/大和市
  2. 群馬県/高崎市
  3. 静岡県/藤枝市
等があり、今後も急速に増えていくであろう。

 手続きをビジネスにしている士業には逆風でもある。


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地銀のビジネスモデルが変わる…(2019/06/19)

 地銀が出資する「地域商社」の設立が目立ってきた。北海道銀行が出資する「北海道総合商事」や山口銀行が出資する「地域商社やまぐち」、第四北越銀行の「ブリッジにいがた」、山陰合同銀行・鳥取銀行の「地域商社とっとり」等の活動がよく紹介される。

 銀行の一般企業への出資比率は5%までと決まっているが、今回の銀行法改正で地域金融機関の地域商社への出資割合の上限を大幅に上げることが予定されており、地域商社の実績次第で銀行本体の収益に取り込むことも可能になってくるようだ。

 地域商社は「地産外消」をキーワードにして、地場産品の販売や海外も含めた販路の開拓等を担い、地域創生に貢献するものとして期待されている。

 地域商社の先駆者とも言われる「北海道総合商事」は、2015年の設立で従業員10人、資本金1億円の規模で活動しており、ロシアの永久凍土の地でトマト栽培を成功させた他、北海道全土の野菜のロシア極東地域での販売にも携わっている。

 「地域商社やまぐち」も、「やまぐち三ツ星セレクション」として山口の地場産品をブランド化してネット販売したり、アンテナショップを通じて都心での販売に貢献したりしている。

 地銀が地域商社やITを絡めた経営改善提案で、取引先である中小企業へのコンサルティングを強化し、利鞘収益のみを追求するビジネスモデルから脱却する時代は遠くない。逆にビジネスモデルを変えることのできない銀行は捨てられてしまうことになるのだろう。

 地域金融機関の取引先と会計事務所の顧問先は殆ど同一である。会計事務所もコンサルティング能力を高めて、地銀との共存を図れるようにしなければならない。


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早期警戒制度が顧問先に与える影響(2019/06/12)

 2019年3月期の地銀決算が出揃った。北陸3県の6地銀の決算では5行が減益となり、東北の地銀15行の内3行が有価証券含み損を抱える状態に陥った。

 返済猶予を受けた取引先の業績回復が見込めず、引当金の積み増しで減益要因となったり、有価証券の益出しで利益を確保してきた地銀が含み損を抱えたりしている状態では、こうした決算対策も行えなくなってきた。

 4月3日に、金融庁は地域金融機関に対する新しい監督指針を発表した。金融庁が銀行破綻を防ぐ目的で導入した「早期警戒制度」を見直し
  • 従来は海外業務を展開しない地銀では自己資本比率が4%であれば健全とされたが
  • 今後は自己資本比率4%であっても中長期的な「稼ぐ力」を重点チェックし、必要に応じて業務改善命令を出す
 決算でやりくりした「収益」でなく、「持続可能な収益」であるかどうかを、金融庁検査の重点項目としてチェックするようだ。問題は「持続可能」な「定義」が曖昧で、検査官の推量によっては業務改善命令が出されてしまうことになるのかもしれない。

 地銀が業務改善命令を出されたら、「業務効率化」を旗印に店舗閉鎖・人員削減等の施策で経費削減を行い、「持続可能な収益」の確保を求めなければならない。こうした対応のスピード感がないとなれば地銀同士の統合・再編へと進んでいくのかもしれない。

 店舗閉鎖になれば、返済猶予を受けている企業は別の店舗(別の支店長)の評価を受けることになり、従前と同様の対応が待っているとは限らないことを念頭においておく必要も生じるだろう。


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顧問先開拓としての合同会社の位置づけ(2019/06/05)

 2018年1-12月で新規設立された法人数は約12万社で、その約2割超が合同会社形態と言われている。

 法人番号公表サイトで新設法人の形態別推移を調べてみると

形態 2018年1-12月 2017年1-12月 2016年1-12月
株式会社 87,742社 91,690社 89,667社
(対前年比) 95.60% 102.20%  
合同会社 28,911社 26,857社 22,824社
(対前年比) 107.60% 117.60%  

 2019年1-5月まででも合同会社の新設数は12,379社で、勢いは変わらない。

 地域別で2018年1-12月に新設された合同会社の分布を見ると
  1. 東京都 10,062社
  2. 神奈川県 2,182社
  3. 大阪府 1,902社
  4. 埼玉県 1,424社
  5. 千葉県 1,395社
  6. 北海道 1,245社
  7. 愛知県 1,117社
  8. 福岡県 992社
 首都圏で全体の5割超を占めるが、北海道の合同会社の新設数が他の地方と比較して突出している。

 合同会社の特徴として
  1. 有限責任
  2. 1円から出資可能(実際に設立数の約5割が資本金500万円未満)
  3. 設立費用が安い
等があげられ、新規起業者・フリーランスの個人事業からの法人なり・副業のための受け皿法人や資産運用目的の法人としても使われているようだ。

 法人廃業数が年間5万社近くに達する状況下で、会計事務所も新設の合同会社へのアプローチも強化する必要性があるのではなかろうか。



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影山勝行経営フォーラム
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