
- 2026/10/27 再チャレンジ支援における税理士の役割
- 2026/10/14 物価高騰時の限界利益改善策とは
- 2026/09/29 廃業コストの見積もりを依頼されたら……
- 2026/09/15 金利上昇下での既存・新規融資の金利交渉
- 2026/09/02 相続税申告マーケットをいかに取り込むか
中小企業庁金融課が2026年6月に公表した「中小企業活性化協議会の活動状況について」の報告書を見ると、
- 2025年度の協議会への相談件数が10,081件と過去最高に達した。
- 再生支援を完了した企業の約6割が売上高5億円以下、約9割が従業員数では100名以下。
- 協議会の来訪経路については、地銀・第二地銀・信金・信組で5割を超え、企業等からの来訪も2割を超えた。
- 再生支援の手法では、管理会計導入による製品・取引先等の選択と、集中による事業改善が多く見られた。
- 金融支援の手法では8割強はリスケで、第二会社方式による債務免除も15%程度あった。
- 再チャレンジ支援の完了件数は1,908件と、前年度より4割強増加した。
再チャレンジ支援とは、事業再生が極めて困難な中小企業や借入金の保証債務に悩む経営者を対象に協議会が支援するもので、具体的には次のような対応が考えられる。
- 事業譲渡・スポンサー支援による事業と雇用の継続
- 経営者保証ガイドラインを活用した個人の破産回避
- 早期の廃業型私的整理(清算手続)
公租公課や買掛金等の一般債務を支払い、金融機関との合意に基づいて金融債務を整理することで、裁判所を通さず円滑な廃業を目指す
日次・週次の資金繰り表を作成し資金が完全に尽きてしまうまでに、顧問税理士が協議会に相談し、野放図な破綻に至ってしまわないよう、伴走型支援が必要になってきている。
[参考]中小企業庁「中小企業活性化協議会の活動状況(令和7年度第4四半期)」
中小零細企業の限界利益率改善の原則は
- 販売単価のカットアップ(値上げ・高付加価値化)
- 変動費の直接抑制(歩留まり率の改善)
- プロダクトミックス(粗利の高い製品への転換)の最適化
の3つに集約される。
特に金属・機械加工や食品製造業においては、原材料費が高騰を続ける中、歩留まりロスの発生は限界利益を直接減じるだけに、早急の改善を要する。
例えば材料費:260円、加工費:180円、合計変動費:440円/個の製品について、歩留まり改善によって製品1個あたりの変動費を3%削減できるとすると、1個あたりの限界利益改善額は440円×0.03=13.2円となり、年間の生産数量が120万個なら年間1,584万円の限界利益増となる。
このように、歩留まり改善は売上ではなく、捨てていた材料費や加工時間を減らすことで、限界利益の改善につながる。
まずは主要製品ごとに原材料費・加工費を算出し、製品単位の歩留まり率(材料ロス・加工ロス)を測定する。そして、現状のような原材料高騰の状況下では、「不良1個あたりの損失額が過去よりも大きくなっている」ことを現場担当者と共有し、改善活動を行うことが、限界利益改善の近道である。
更には、歩留まり率向上の改善実績を、根拠資料とともに銀行へ提出できるよう用意しておくことも、重要になろう。
政策金利が0.25ポイント上がって1.25%になった。年内にも再度の利上げがあるかもしれない。当然、既存の融資に対する金利も、銀行からプラス改定の交渉がくるに違いない。仕入れ・運賃・人件費等々、物価も更に上がり続けている。事業継続の意欲を持ち続けるには、一部の経営者にとって辛い時代である。
顧問先から「廃業するのに手元キャッシュで足りるのか」と問われたとき、即座に見積もれるか考えておいたほうが良い。
廃業コストは、
- 未払い税金・社会保険料
- 解雇予告手当・退職金
- 店舗・工場の原状回復費用
- リース契約の残債や機器・車両等の中途解約金
- 在庫・固定資産の処分費用
- 有害物質や産業廃棄物の処理費用
- 登記・専門家への費用
から成る。
経営判断の一つの目安として、
- 実質キャッシュ>債務+廃業コストであれば、「自主廃業」が可能であろう。
- 実質キャッシュ=債務+廃業コストなら、今すぐ決断すべき最終デッドラインといえる。
- 実質キャッシュ<債務+廃業コストなら、法的整理も視野に入れた対応を迫られる。
廃業における最大の敵は、「まだ大丈夫だろう」という先送りであろう。廃業した場合の総コストと手元キャッシュの差額を定期的にシミュレーションしておくことが、経営者自身の今後の人生を守るうえで、最も重要なことである。
10年国債利回りが一時3%に達した。
国内銀行の業態別の「貸出約定平均金利の推移(2026年7月分)」を見ると、
| 業態 | 貸出約定平均金利(新規・長期)(%) | 前年同月比(%) |
|---|---|---|
| 都銀 | 2.014 | +0.557 |
| 地銀 | 1.870 | +0.539 |
| 第二地銀 | 1.821 | +0.410 |
| 信金 | 2.157 | +0.286 |
[出典]日本銀行「貸出約定平均金利」より作成
2026年7月に発行された10年利付国債の表面利率は2.7%となっており、政策金利についても、9月に1.25%への引上げ観測が強まるなど、さらなる上昇が見込まれている。
政策金利が上がると、銀行の資金調達コストが上がる。結果的に、貸出金利の上昇として企業に転嫁されることになるであろう。
さらに、業績の良くない中小企業になると、リスクプレミアムが金利に上乗せされ、4〜5%近い借入金利が現実味を帯びてくるであろう。金利上昇下では、新規の設備投資や運転資金の借り入れコストは、既存融資の金利交渉での金利上昇よりも早く、企業業績に響いてくる。
特に毎月の返済額が厳しくなってきた企業では、既存の複数の融資をまとめて一本化し、返済年数を伸ばして毎月の返済額を軽減させたいと願うだろう。しかし、融資を一本化する場合には、新たな融資として扱われることになる。その時点の金利水準で条件提示され、従来より金利が上がる可能性も覚悟しておかねばならない。
いずれにしても、既存融資についても、変動金利や金利見直しのタイミングでは、銀行側から金利引上げを求められる場面が増えてくる。その対策も必要になってくる。
金利交渉では、単に「金利を下げてほしい」と要請するのではなく、直近の試算表や資金繰り表、今後の事業計画等を示し、自社の返済能力や将来性を銀行に説明することが重要になる。また、複数行と取引がある企業では、各行の提示条件を把握しておくことも交渉材料になる。
金利上昇局面では、借りる側も銀行任せではいけない。自社の信用力を数字で説明する力が問われる。
財務省のホームページに「相続税の課税状況の推移」が公開され、令和6年分のデータが掲載されている。これによると、
- 令和6年の死亡者数は160万5,378人と、初めて160万人台を超えた
- 課税件数は16万6,730件で、死亡者の10.4%に相当する
- 相続税の被相続人1人当たりの納付税額は1,948万円で、相続税収は3兆2,487億円
- 課税価格が1億円以下の件数が、全体の60.1%を占める
- 課税価格が5億円以下の件数で、全体の97.1%に達する
- 課税価格5億円超の件数が全体の2.9%で、納付税額は全体の48.7%となった
団塊の世代が順次80歳代に差し掛かり、「多死社会」が本格化する。日本の今後10年間の死亡者数は年間160万人前後の高水準で推移すると思われる。
相続税の課税件数も、当面の間は「死亡者の1割」が継続するだろう。今後の相続税申告マーケットを予測すると、
- 年間16〜20万件の相続税申告需要が見込まれ、
- その大半は、課税価格5億円以下の層。
- 遺産の多くは、不動産、有価証券、預貯金等で占められ、
- 税理士と接点がない個人も一定数存在すると考えられる。
- 銀行・証券会社・信託銀行・大手不動産会社等が最初の相談窓口となり(オーナー経営者等であればM&A仲介会社も)、
- 個人と税理士の間に入るケースが、更に増加してくる。
- 結果、税理士は、需要者である個人にコストをかけてPRするよりも、相談窓口となる機関に営業し、
- その競争がますます増加してくるのではないか。
いずれにしても、相続税申告マーケットは今後10年は確実に成長するだろう。
[参考]財務省「相続税・贈与税に係る基本的計数に関する資料」























