2023/02/01 金融機関に選別される会計事務所かどうか
2023/01/25 顧問先の1月分の電気代の明細を必ず見ておこう
2023/01/18 年末の中小零細企業向け貸出金利の予測
2023/01/11 事業承継支援専門会社の登場で顧問先がなくなる?
2022/12/28 決算チェックリストに重要項目として追加すべきこと
2022/12/21 メインバンクが企業オーナーになる
2022/12/14 虎視眈々と事業承継案件が狙われている

金融機関に選別される会計事務所かどうか(2023/02/01)

 金融庁の委託を受けた日本生産性本部が公表した「業種別支援の着眼点(試行版)」を、会計事務所職員も熟読しておくべきだろう。金融機関の現場経験の少ない担当者に向けた初歩的な経営ガイドブックである。

中小企業でも困窮を極める建設・飲食・小売・卸・運送業など、業種別に「決算書の見るべきポイント」「業種特有の経営の勘所」「過去の成功事例」などが簡潔に表現されている。

 TKCも税理士や中小企業診断士等に呼び掛けて、この試行版を使った勉強会を始めているようだ。当然、地域金融機関内でも、この試行版で業種別の目利き行員を育成し、既存取引先の企業再生に向けた支援や、支援を梃にした新規取引先の獲得に向け、猛勉強を始めているところもある。

 以下、苦境に喘ぐ3業種で勘所となるポイントをいくつか挙げると

  1. 中小建設業
    • 決算書では完成工事利益が一括で表示されるが、工事業種別の受注割合を確認して完成工事利益を分解し、業界平均値と比較して課題を追求する
    • 売上原価が多い少ないでなく、各費目の割合に着目し、施工体制が適切か推測する
    • 固定資産台帳に特殊機械や特殊車両があれば、当該企業の強みを発見できる
    • 建設業の流動性を見るには「立替工事高比率」が重要
  2. 中小飲食業
    • FL比率=(材料費+人件費)/売上高が60%以下になっているか
    • 店舗面積と適正人数で運営できているか決算書の人件費総額で類推する
  3. 中小運送業
    • 長期間における単年度の平均利益獲得能力を(純資産ー資本金)/決算期数で見る
    • 人手不足の中、車両台数での売上目標でなく、運転手一人当たりの運送収入×運転手数で見ることが現実的
    • 固定長期適合率で事業用資産の維持を短期資金で賄っていないか要チェック

 金融機関も、統合やDX導入で余裕のできた行員を、こうした中小取引先の事業支援に回すことが可能になってきている。今後は更に、「金利競争」でなく、「プレゼン能力」で取引先の信頼を得る競争に移っていくだろう。そしてその先は、目利きに必要な決算書を作る会計事務所か否かの選別に繋がっていくのだろう。

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顧問先の1月分の電気代の明細を必ず見ておこう(2023/01/25)

 電気代高騰が大きな話題になっている。政府の電気・ガス代の負担軽減策が1月から実施されるが、支払いベースで見ると2月分から2割程度軽減されることになっている。

 ある個人の家庭では、1月請求分の電気代の使用量が、前年同月比で約15%減っているのに、請求額は約30%増となっていた。正味の電気料金の平均単価が、前年1月が26.8円/kwhに対し、今年1月は40.9円/kwhで、約50%値上がりしていたことになる。

 中小零細企業の契約電力は、低圧契約(50kw未満)と高圧契約(50kw〜2000kw未満)が大半で、特別高圧契約は大型スーパーや大規模工場が主となっている。低圧の平均単価と高圧の平均単価を、ここ1年間の推移で見ると

契約電力種類 2022/9月単価 2021/9月単価 前年同月比
低圧 30.32円 25.52円 +18.8%
高圧 22.58円 14.95円 +51.0%
新電力ネット統計資料より作成

 特に工場等で、消費電力が大きいものを製造する中小製造業のエネルギー価格は、負担軽減策があってもコストアップ要因であることに変わりはない。地域によって補助金があるようだが、原材料価格だけでなくエネルギー価格の高騰による価格転嫁が進まなければ、より窮地に立たされる企業が続出するだろう。

 9月までは政府の負担軽減策もあり、今後の電力料金は横ばいか微増と推測されるものの、10月以降は現状単価と比較して大きな上昇となる見込で、再度の事業計画の見直しが必要となろう。

 コロナ融資の返済計画書に、金利上昇のシミュレーション及び光熱水費の上昇も見込んだものを、いつでも金融機関に提供できるようにしておこう。

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年末の中小零細企業向け貸出金利の予測(2023/01/18)

 こんなに風向きって急に変わるものなのか? とあっけにとられるくらいの経営環境の変化が来ている。

 新発10年物国債利回りが、1月13日の債券市場で0.545%を瞬間的に付けた。日銀が0.5%を上限として国債を無制限に購入し長期金利を維持していたにも関わらず、日銀に売却する価格よりも更に低い価格で売却した市場参加者がいたことを証明している。

 昨年2月、日銀は0.25%を上限として無制限に国債の買い手となり、長期金利の上昇を抑えてきた。この時点で米国の10年物国債利回りは2%台に乗せている。

 その後米国のFRBは利上げを続け、2022年12月には政策金利誘導目標を4.25〜4.5%まで設定した。専門家は、2023年末の米国の政策金利は5.125%程度まで上がるだろうと推察している。

 昨年2月の日米長期金利差は約4%。同様の差が2023年末で生じるとすると、日本の推定される長期金利は1.1〜1.2%となる。日本政策金融公庫の中小零細企業に適用されるマル経融資の今月の貸出金利が1.3%。現状の長期金利0.5%から、年末推定の1.1〜1.2%の金利水準の差分の0.6〜0.7%程度のマル経融資金利の上昇があるかもしれない、という観測もできよう。となれば、マル経融資の利率が年末には2.0%程度にまで上昇するかもしれない。

 日米金利差がこれだけ生じた結果として、急激な円安現象が表面化した。日米金利差を縮小する方向で政策転換が行われれば、年末には中小零細企業は2.5〜3.0%程度の貸出金利を覚悟しておくことが必要かもしれない。

 仕入れ価格やエネルギー価格及び運送費等の高騰や、賃上げによる人件費等コスト増が際限なく拡がる。加えて、コロナ融資の返済も含めた既存借入金の金利上昇による返済原資が増加する。頭の痛い問題となる。

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事業承継支援専門会社の登場で顧問先がなくなる?(2023/01/11)

 地銀出身者4名で2021年1月に設立したソーファンという会社が、滋賀県の近江八幡市にある。

 事業承継型投資を目的とした企業で、年商で10億円未満の滋賀県・京都府にある建築関連会社3社を事業承継し、買収資金と経営陣の派遣を同社自らで行っている。今後は年間で10社程度の中小・零細企業の事業承継投資を行っていくという。ソーファンで経営人材候補を採用し、自己資金及びLBOで買収資金の調達を行っていくビジネスモデルの構築を目論んでいるようだ。

 2021年に東証グロース市場に上場した名古屋のセレンディップ・ホールディングスも、現在6社の自動車関連部品の中小製造業に投資を実行していて、経営者人材を同社から送り込んでいる。トヨタ系を主たる納入先にしている愛知・静岡エリアの中小製造業の事業承継支援の結果として、上場に至っている。

 こうした同一エリアでの事業承継支援は、M&A仲介とは違って自ら投資実行し経営者派遣を行う。そのため、地域で生きてきた中小零細の経営者からすると、同業に買収されるより心理的に事業承継のハードルが低くなる。今後はこうした投資+経営人材派遣型の事業承継支援がさらに多く誕生するものと思われる。

 同時に、経理や給与計算や資金管理等のバックオフィス系の業務をグループ内の専門会社に委託することで、業務の効率化が図られやすくなる利点もある。

 コロナ禍をきっかけとして、事業再構築補助金の獲得支援を行うため、認定支援機関である地銀・信金もコンサルティング能力の強化を図ってきた。

 これまでの事業再構築補助金の支援件数を過去の累計で見ると、地銀104行のうちトップは名古屋銀行の355件で、八十二銀行が318件、北海道銀行が298件と続き、長崎銀行は2件で104行中最下位であった。

 同様に全国の信金の支援件数を見ると、259金庫中、トップは京都信用金庫の464件、2位は京都中央の322件、3位が大阪信用の311件である一方、12金庫は支援件数1件のみと、取組に対する大きな格差が生まれている。

 地銀・信金の中小企業支援に対するコンサル能力と、今後生まれてくる「地域特化・業種特化型事業承継支援会社」の活動がマッチングするようになると、単独の企業努力では見えてこない課題も、次の成長に向けてクリアできる見通しが開けてくるかもしれない。

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決算チェックリストに重要項目として追加すべきこと(2022/12/28)

 12月23日に経産省・金融庁・財務省合同で「経営者保証改革プログラム」が公表された。

 中小企業経営者個人の保証をなくして融資を行う慣行を根付かせる、政府の覚悟を表現したものと評価できる。

 2022年3月末時点の「新規融資における経営者保証に依存しない融資の割合」は29.6%に留まっている。残りの3分の2は「中小企業が融資を受けるには代表者の個人保証が必要」と、従来の金融機関の姿勢は変わっていない。

 確かに、法人から代表者への貸付が日常的にあったり、貸付残高が何年も維持されたままであったり、重要な工場敷地が代表者個人の名義のままで、法人と賃借関係を結んでいたりすると、法人に融資して返済が不能になったとき、「担保として取れるもの」が法人の資産では不足する。「貸す側」としては、代表者個人の資産で不足分を補うやり方は当然の行為かもしれない。
 しかし、「借りている側」は、事業経営が失敗すれば個人保証によって全財産没収ということになりかねない。

 個人保証の隠れた問題として、経営者側は「金融機関と結んだ保証契約の内容をよく理解していない」、金融機関は「融資先の企業の財政状態が優良になっているのに、保証解除の話題を持ち出さない」ということが挙げられる。そしてこうしたことが、経営者保証の依存から脱却できていない一因でもある。

 融資を行って「個人保証の一筆」がなければ無能の行員、という烙印を押されていた過去もある。「事業性への目利き」への評価より「個人保証契約締結」の評価のほうが高ければ、銀行の融資姿勢は変わらない。

 「経営者保証改革プログラム」の施策の中で、個人保証契約の必要性について

  • どの部分が十分でないために保証契約が必要となるのか
  • どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるのか

この2点を経営者に十分な説明をし、その結果を記録し、金融庁に報告することが義務付けられる。

 会計事務所も、同業やコンサルタントから「経営者保証の解除提案」をされ結果に満足した経営者が他の事務所の顧問先にならないよう、注意を払っておくべきだ。

 今後は顧問先の決算月のチェックリストに、「経営者保証の現状と改善提案」を入れておくことが重要になる。

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メインバンクが企業オーナーになる(2022/12/21)

 地銀が投資専門子会社を設立し、事業承継に悩むオーナー会社の議決権を過半数〜100%保有することが、銀行法施行規則の改正で可能になった。全国で地銀20行以上がすでに運営させており、今後更に増加するだろうと言われている。

 今月も、仙台に本店を置く七十七銀行が「七十七パートナーズ」を設立し、業務を開始した。事業承継に関する支援を必要とする地元企業の株式の過半を取得して経営権を持ち、経営人材の派遣も行う。従来以上の踏み込んだ支援で企業価値の増加を図る予定だ。

 長野市に本店を置く八十二銀行も、投資専門子会社と事業再生ファンドを同時に立ち上げた。ファンドの総額は300億円と、単独地銀としては過去最大規模である。来年の6月には長野銀行との経営統合も控え、経営権を握ったオーナ会社に対し、統合によりスリム化された行員を派遣し、バリューを上げ、M&Aで資金回収するモデルを構築するのかもしれない。

 100%まで出資可能な「事業承継」を目的とする投資専門子会社の議決権保有期間は5年とされている。保有して5年経過する時点までには、魅力のある「譲渡企業」に変身させておかねばならない。当然、地銀が事実上のオーナーになるので、すべての融資先の見る前で倒産でもさせれば、取り返しがつなかいというリスクも抱える。ゆえに、融資判断以上の「目利き」が必要になる。

 後継者が不在でも目下の業績が堅調な企業や、将来性のあるビジネスモデルや技術を保有するオーナ企業には、現状でのM&Aに譲受企業は引きも切らないであろう。

 投資専門子会社が過半以上の議決権を有して投資する対象は、現状では譲渡案件にはなりにくい。財務内容の向上を図る、一定の設備投資をして新規事業を立ち上げる……など、それこそ事業再構築を5年間のうちに行い、企業価値を高めて、買い手候補が集まる「譲渡企業」に変身させねばならない。

 一方で、こうした実績が地元企業の信頼を集め、本来の銀行業務の成長に大いに役立つこともあるだろう。

 100%出資と5年期限のハードルを超えて地域経済に貢献できるか、今後の地銀の活動を注視する必要がある。

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虎視眈々と事業承継案件が狙われている(2022/12/14)

 銀行法改正で議決権のマジョリティ出資(過半出資)ができるようになったので、メガバンクや地域金融機関が相次いで投資ファンドを設立している。特に中小企業の事業承継及び事業再生に、ファンドの資金力を生かして企業価値を高めた後、M&A若しくはIPOで収益を稼ぐビジネスモデルの構築を急いでいるようだ。

 三井住友フィナンシャルグループは、少額出資の再生・承継のファンド残高目標を2025年までに1,000億円、過半出資は2027年までに1,000億円を目指している。

 今年の3月に会社更生法の適用を受けた鶏卵業界最大手のイセ食品グループ(負債総額約470億円)のスポンサーとなり、三井住友フィナンシャルグループの事業承継ファンドの第一号案件となった。

 イセ食品は急速な業容拡大に伴い借入金が増加し、返済猶予や不動産売却等で債務圧縮・繰延を図ったが、創業者と親族後継者との間での紛争が表面化し、経営権の所在が不明確な中で会社更生法の申請がなされた経緯があった。「森のたまご」というブランド資産を有しているので、資金と経営人材が加われば更生は可能になるだろう。

 ゆうちょ銀行も「新しい法人ビジネス」をシンポジウムで公表し、2026年3月までに事業承継投資ファンドの残高1,000億円を目指すとしている。ゆうちょ銀行が出資者として地域金融機関のファンドと関係づくりをしてきているが、今度はゆうちょ銀行自体がファンドの運営者としてビジネス展開を行っていく。

 今年の9月時点で、地域金融機関が運営するファンドへのゆうちょ銀行の出資先件数は、地銀で55行、第二地銀で24行、信用金庫で34行に及び、強固なネットワークを築いてきた。

 団塊世代の経営者が事業承継や廃業で引退してきているが、それでも70代以上の経営者の割合も高まってきており、金融機関の新ビジネスとして「事業承継」「事業再生」が熱を帯びてくることは必須である。この市場に加わることができるか否かも、今後の士業に大きな影響を与えるに違いない。


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