2025/11/11 相談件数が過去最高、民業圧迫か?
2025/10/29 オルツの粉飾決算の構造を仕訳で推測すると……
2025/10/15 freeeが黒字転換した
2025/10/01 緊急時の節税対策案
2025/09/17 調達担当者が分析する中小製造業の粉飾決算
2025/09/03 銀行向けの承継提案書をcopilotを使って作成しよう
2025/08/20 Copilotを使って税務相談してみた

相談件数が過去最高、民業圧迫か?(2025/11/11)

 中小機構が「令和6年度よろず支援拠点相談等実績」を公表した。

 全国での相談対応件数は717,618件で、過去最高件数になった。最も多かったのは福岡県の75,430件で、次が鹿児島県の41,440件。なお、東京都は10,934件と低調だった。

 よろず支援拠点の特徴は、

  1. 売上拡大、経営改善、新規創業等の相談および伴走支援
  2. 登録した専門士業等のアドバイスを受けることができる
  3. 相談は何度でも無料(中小企業庁が予算を持っている)
  4. 従業員5人以下の企業の相談が全体の57.9%を占め、創業前の相談が18.5%に達する
  5. 利用者の満足度は95.8%

 福岡県のよろず支援拠点では、今年の10月予約分から

  1. 月の予約は4件まで
  2. ネット集客を専門とするITコーディネーターの相談予約は12月末まで満席状態
  3. 相談の仕方は「対面相談」「オンライン相談」を原則とする
  4. コンサルタント業の事業者の相談の利用には一定の制限をかける(ノウハウの流出を避けるためか)
  5. マルチ商法等の事業者の利用は停止する

といった詳細なルールの変更を設けている。

 福岡県の拠点内の専門士業およびコンサルタントは56名ということだ。うち18名が女性の専門家で、税理士は3名登録されている。

 拠点で行われている相談業務の一例を挙げると、

  1. IT WEB SNSのカテゴリーでは
    1. グーグル等で検索上位に表示される対策
    2. スマホユーザーを取り込むLINEアカウントの活用
  2. 売上拡大のカテゴリーでは
    1. ふるさと納税返礼品採用のアドバイス
    2. クラウドファンディングの相談
  3. 飲食のカテゴリーでは
    1. フードコーディネーターによるメニュー作り相談
    2. 居抜き物件の相談、店舗契約の相談
  4. 総務経理のカテゴリーでは
    1. 社労士による就業規則策定相談
    2. 税理士による弥生会計、freee、マネーフォワード、ミロク情報等会計ソフトの相談
    3. インボイス制度対応の相談
    4. 電子帳簿保存法の相談
  5. 資金繰り/事業計画のカテゴリーでは
    1. 元銀行支店長による財務改善の相談
    2. 創業資金調達の相談
    3. 売掛金回収の相談
  6. 海外のカテゴリーでは
    1. 海外取引企業現役社長による海外輸出、海外向け商品開発の相談

 これらの相談が無料、かつ、予約さえ取れれば何度でも相談可能という。民業圧迫ではないかと専門家から指摘されてもおかしくないほどの充実ぶりである。

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オルツの粉飾決算の構造を仕訳で推測すると……(2025/10/29)

 10年前に設立され、2024年10月に東証に上場を果たした「AI議事録サービス」の株式会社オルツは、上場後、

  1. 2025年4月:売上過大計上の疑いで第三者委員会の設置
  2. 2025年7月:売上高の最大9割を過大計上と公表し民事再生法の適用申請
  3. 2025年8月:上場廃止
  4. 2025年10月:元社長含む経営幹部4人が粉飾決算疑いで逮捕

[参考]株式会社オルツ IR情報

 2024年12月期のオルツ社の有価証券報告書の連結損益計算書によると、

  1. 売上高は約60.5億円
  2. 販管費は約80.5億円
  3. 営業損失として▲23.2億円

となっている。さらに販管費の内訳を見ると、

  1. 広告宣伝費が約45.8億円(対売上高比75.7%)
  2. 業務委託費が10.2億円
  3. 研究開発費が13.6億円

となっており、広告宣伝費と研究開発費の合計と売上高がほぼ同額となっていた。

 同社の売上高は、AI議事録サービスのシステム販売数及びアカウントの発行数量×単価で大半が構成され、直販及び販売代理店経由でサービスが提供されていた。

 この事件は、札幌に本拠を置く監査法人、主幹事証券である大和証券、名だたるベンチャーキャピタル数社すべてが、粉飾決算を見抜けなかったことでも世間を賑わせた。

 今回の粉飾決算を簡略的に仕訳で推測すると、

  1. 販売代理店等にアカウントを大量発注させ架空売上を計上
      売掛金 / 架空売上
  2. 外部企業に広告宣伝費を支払い販売代理店等に資金を還流させ、売掛金の回収を行う
      広告宣伝費 / 売掛金

 実物資産の売買でなくアカウントの販売なので実態が分かりにくいこと、経営者及び少数の幹部で仕組まれていたこと、AI関連企業として急成長分野に属していたこと、等々の理由で、歪な財務諸表に誰も気づけないまま、上場から倒産に至ったと思われる。

 早速、個人投資家が集団訴訟で損害賠償請求を行い、特に監査法人の責任は追及されることになるだろう。

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freeeが黒字転換した(2025/10/15)

 会計ソフトのfreee社の2025年6月決算が公開された。その有価証券報告書(連結)によると、

  1. 売上高は対前年で78億円の増加
  2. 売上原価は対前年で15億円の増加
  3. 結果、売上総利益は対前年で63億円の増加
  4. 販管費では対前年で26億円の減少(主たる項目は下記)
    1. 開発費が対前年で36億円の減少
    2. 広告費が対前年で11億円の減少
    3. 人件費が対前年で12億円の増加
  5. 結果、税金等調整前の当期純利益は前期の▲101億円から+4億円と黒字転換を果たした。

 freeeのビジネスモデルは「課金者数(個・法人)×平均課金単価」で売上の大半が構成されるので、この2つの数値の推移が今後の成長に繋がる。

 課金者数は、2025年6月末時点で

  1. 法人ユーザーが234,072社
  2. 個人ユーザーが372,461者
  3. 合計 606,533者

 個人法人合わせた課金単価は56,704円(月単価4,725円)で、売上高343億円に到達した。

 2026年6月期の通期予想では、売上高が409億円〜415億円、営業利益で24.6億円〜25億円としている。

 これで2025年6月期の1株当たり純資産(解散時価)は329円となり、現在株価の10倍を超えた。1株当たり利益も23円の黒字になり、現在株価の150倍で取引されている。

 freee社がターゲットとする市場は、

  1. 個人事業主448万者
  2. 従業員19人未満の法人176万社
  3. 従業員1,000人以下の法人29万社

 合わせて約650万者の個人事業主や小規模法人、中小・中堅企業で構成される。やっと、市場全体の10%の課金者数を達成して黒字転換を果たした

 ここ数年freee社は、

  1. 情報システム部門向けの自動化ツール「Bundlle」を提供するWhy社の買収
  2. インボイス・電子帳簿保存法の対応に「sweeep社」を買収
  3. Mikatus社、YUI社など連結会計ソフトを提供する企業の買収

などを行っている。

 本業でのビジネスの安定期に入り、事業領域を拡大するための投資段階に入ってきたようだ。

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緊急時の節税対策案(2025/10/01)
 以下は、「売上3億円規模の建設業、今期利益は5,000万円超、現金は1,000万円増加」という状況に対して、緊急で実行可能な節税対策を、Copilotがまとめたレポート形式の提案書からの抜粋である。

 建設業で月次決算を行っていても、突発的な工事受注があったり、未成工事勘定の処理が曖昧で、最終決算を組む段階で予想外の利益が増加したり等、想定以上の税金支出に経営者が悩むことは、よくある光景だ。この企業の場合は極端な「勘定あって銭足らず」の状況になっている。そこで、Copilotの登場。例によって、約10秒で主たる回答が出てきた。

概要と課題認識:

  1. 会社規模:売上約3億円(建設業)
  2. 利益状況:例年1,500万円 → 今期5,000万円超(約3.3倍)
  3. 現金残高:期首比で+1,000万円程度

今期中に実行可能な節税対策一覧:

  1. 決算賞与の支給
    決算前に賞与を通知・翌月末までに支給で損金算入
    通知・支給・経理処理
  2. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)
    月20万円×最大240万円まで損金算入可能
    40ヶ月以上加入で全額返戻可。資金拘束あり
  3. 少額減価償却資産の特例
    30万円未満の工具・備品等を一括損金算入
    決算前に購入・使用開始が必要
  4. 消耗品・資材の前倒し購入
    決算前に必要分を購入し、損金算入
    実需に基づくこと。過剰在庫は避ける
  5. 社宅制度の導入
    役員・従業員の自宅を社宅扱いにし、家賃を経費化
    賃料相当額の徴収・契約書作成が必要
  6. 保険の活用(逓増定期など)
    長期的な退職金準備と損金算入
    解約返戻率・契約内容に注意。即効性は限定的
  7. 決算期の変更(来期以降)
    利益の分散による税負担平準化
    実行は来期以降。戦略的検討

現金が増えていない理由の考察:

  1. 未収入金の増加:工事完了分の請求が未回収
  2. 仮払金・前渡金の増加:資材・外注費の前払い
  3. 棚卸資産の増加:資材在庫の積み上げ
  4. 未払費用の減少:前期の未払分を今期に支払済

 税務相談をAIで補完することは、業務の大幅な効率化につながる。これは誰もが認めることである。

 問題として残るのは、上記赤字で記載した期限・数値が決算期時点で有効であるか、数値の間違いがないかを、人間が再確認する作業である。これをスルーして顧問先に提案することは、言語道断であろう。

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調達担当者が分析する中小製造業の粉飾決算(2025/09/17)

 自動車関税の実際の運用が今後のサプライチェーンにどう影響を及ぼしてくるか、特に下請け製造業の経営陣はやきもきしているに違いない。あってはならないことだが、今後の決算書作成について「粉飾を匂わす」行為を、会計事務所に暗に求めてこないとも限らない。

 逆に「部品発注側の調達担当者が、取引先から得た決算書が粉飾であるか否かを見極めるポイント」について、会計事務所がセミナーを開催した。主催者によると、盛況だったようだ。

 そこでCopilotに、次のように問うてみた。

自動車部品の製造業の決算書から粉飾の有無を見分けたい。ポイントを教えてください。

 Copilotの回答は、以下のとおり。

もちろんです。粉飾の兆しは決算書全体に散らばって現れることが多く、単一の数値よりも「動きの不自然さ」や「整合性の欠如」に注目することが効果的です。特に自動車部品メーカーの場合、業界特性を踏まえて見ることで精度が上がります。

主なチェックポイント

  1. 売上高と生産・販売データの整合性

    1. 販売台数や生産量と売上高が比例していない場合は要注意
      生産量減でも売上が大きく増えている場合、架空売上や過大計上の可能性
    2. 得意先構成や輸出比率が急変していないかも確認
  2. 売掛金・棚卸資産の動き

    1. 売上増に対して売掛金回収の遅延や残高急増
      → 架空売上や回収不能債権の隠蔽
    2. 棚卸資産(特に仕掛品や原材料)の急増・回転率の低下
      → 在庫評価の操作・過大計上
    3. 在庫評価方法の変更(先入先出法から総平均法など)が急に行われていないか
  3. 粗利率・営業利益率の推移

    1. 部品価格や原材料市況(鉄鋼・樹脂など)が変動しているのに粗利率が一定のまま
      → 原価操作で粉飾している可能性
    2. 為替レートの変動(輸出入比率が高い場合)と利益率が連動しているか
  4. キャッシュフローと損益の乖離

    1. 営業キャッシュフローがマイナス続きなのに利益は黒字
      → 売上の架空計上や在庫積み増しで利益を作っている可能性
    2. 設備投資や研究開発費の支出が減りすぎていないか(短期的利益確保のための削減)
  5. 関連当事者取引の開示

    1. 関連会社や親会社との取引が不自然に増加
      利益移転や損失飛ばしの典型パターン
    2. 関連当事者の売掛金・買掛金の動きにも注目

 会計事務所と違って調達担当者は販売台数・部品生産量の推移、材料原価の変動、部品価格の推移等々、業界内にいるからこそ分かる変化を肌で感じているので、こういった数値の絡む勘定科目を下手にいじれば、粉飾も容易に発見できるかもしれない。

 粉飾決算に誘惑されそうになっている経営者には、業界特有の数値との整合性を欠くことのないように、自己責任で対応してもらうしかない。

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