新型コロナウイルス感染症の影響により、プロスポーツ界も大打撃を受けています。それに伴い、クラブ運営会社である子会社に対して親会社等が行う各種支援についての税務上の取扱いが、国税庁サイトで掲載されています。確認しましょう。
本事例では、プロサッカーリーグからの照会です。
照会内容は、以下の3つありました。
- 自己の子会社等であるクラブ運営会社に対して支出した広告宣伝費等の取扱い
直接的な親子間だけでなく同一グループ内に属する関係会社含めて広告宣伝効果が見込める会社が支出した金銭のうち広告宣伝費相当分(所謂スポンサー料)は支出時の損金と認められる - 親会社がクラブ運営会社の欠損金を補てんした場合の取扱い
子会社の対象事業に係る欠損金の範囲内での金銭補てんは広告宣伝費(寄附金ではない) - 親会社がクラブ運営会社に対して行う低利又は無利息による融資の取扱い
復旧支援を目的とした、相当の期間内の低利(無利息)融資は寄附金に該当しない
なお、プロスポーツ関連として、上記の他に、先日ご案内した「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」内にFAQが掲載されていますので、こちらも併せて確認しましょう。
問5-2 .《 プロスポーツのスポンサー企業が行う復旧支援 》〔5月15日追加〕
当社は、Jリーグクラブのスポンサー企業として、クラブと広告宣伝契約を取り交わし、毎年スポンサー料を支出しています。
新型コロナウイルス感染症の影響で、試合数の減少や無観客試合の増加によって、広告宣伝価値が減少したことから、当初の契約で定める掲出条件が満たせなくなり、当社はクラブに対して、スポンサー料の一部の返還を求めることが可能です。
しかしながら、契約先のクラブはチケット収入も減少するなどして経営難となっており、当社としては、復旧支援のため、契約上の対象試合や露出が減少したとしても、スポンサー料の返還を辞退(払戻請求権を放棄)する予定です。
このようなスポンサー料の返還を辞退したことによる損失の額は、法人税の取扱上、寄附金や交際費等以外の費用に該当するでしょうか。
上記問いに対する、FAQ内の回答は、以下のとおりです。
- 貴社のスポンサー料の返還の辞退が、新型コロナウイルス感染症の影響により、経営難となったプロスポーツ団体の復旧支援のため、相当の期間内に行うもので、復旧支援目的であることが書面などにより確認できる場合、その辞退による損失の額は、寄附金や交際費等以外の費用に該当します。
- 各プロスポーツ界では、今般の感染症により、大規模イベント等の中止、延期、規模縮小等の要請に伴い、スポーツ活動や興行の運営自粛を余儀なくされ、各プロスポーツ団体の中には事業継続が困難となっているところも少なくありません。
- このような相手先(団体)に対して、スポンサー企業が復旧支援のため、売掛債権等(未収金や貸付金、払戻請求権などの債権を含みます。)の全部又は一部を免除したことによる損失の額は、法人税の取扱上、自然災害時と同様に寄附金や交際費等の額に該当しないものとして取り扱われ、全額損金算入されます。
- また、スポンサー企業が取引関係の維持、回復を目的として相当の期間内に災害見舞金の支出を行った場合も、交際費等に該当しないものとして取り扱われ、その支出額は全額損金算入されます。
つまり、災害時の取引先に係る売掛金等の免除の取扱いを適用する、ということになります。
ここで確認しておきたいのは、「相当の期間内」の取扱いです。相当の期間内とは、「通常の営業活動を再開するための復旧過程にある期間内をいい、例えば、プロスポーツ興行の場合は、試合の再開や観客の入場制限などが解消した後で観客動員数がコロナ禍の前の状態に戻るまでの期間などが考えられます」と記されています。
つまり、緊急事態宣言解除まで、とか、試合再開までや入場制限解除までではなく、以前の状態に戻るまでの期間、と長丁場で認められている点です。今般の新型コロナウイルス感染症の影響は、すぐに解消できるものではありません。元に戻るのはいつになるのか不透明な情勢の中、息の長い支援が求められ、また、税務上の取扱いも認められていることを確認しましょう。