令和元年度税制改正その他の改正により、相続税法基本通達その他が改正されていますが、当該改正の趣旨が国税庁サイトで公表されました。
大きな改正項目としては、相続法改正に係る税制改正、小規模宅地等の特例改正、個人版事業承継税制関連となります。
詳細は、上記URLから確認いただくとして、ここでご紹介したいのは、配偶者居住権の合意解除の場合の贈与税課税と、小規模宅地等の特例改正により新たに登場した“特定事業”に該当する要件の算式と明細書の書き方の例示です。
長くなるので、何回かに分けてご案内します。今回は、配偶者居住権の合意解除の場合の贈与税課税です。
配偶者居住権は、相続法改正により、配偶者保護の観点から生まれた新しい制度です。
この配偶者居住権については、相続税の計算上、相続財産として課税価格に含まれます。その場合は、建物部分は配偶者居住権として、建物の敷地部分は敷地利用権として各々評価をし、相続財産として課税価格に算入します。無論、敷地利用権は小規模宅地等の特例の適用対象です。
ところで配偶者居住権は、基本的に配偶者の終身利用を前提としており、通常ですと配偶者の死亡によって権利は消滅(存続期間の満了)します。しかし、配偶者とその配偶者居住権の目的となっている建物所有者との間で合意、あるいは配偶者がその配偶者居住権を放棄するなどをした場合で、建物所有者が配偶者に対して対価の支払いがないとき、又は著しく低い対価の支払があったときには、その利益移転相当分を配偶者から建物所有者へ贈与したとみなされる通達が、9-13の2に新設されました。
この9-13の2について、計算例として設例が、上記あらまし内で記載されています。以下で確認しましょう。
【設例(イメージ)】
子が建物と土地を相続し、被相続人の配偶者(女性:配偶者居住権設定時70歳)が配偶者居住権(存続期間:終身(平均余命年数:20年(厚生労働省・完全生命表)))を取得し、その10年後に、対価の支払いなく子と配偶者の合意により配偶者居住権が消滅した場合
[消滅直前(相続開始から10年後)の各権利の価額]
〔前提〕
- 建物 経過年数:14年 耐用年数:33年 相続税評価額:650万円
- 土地 相続税評価額:9,000万円
- 複利現価率:0.701(法定利率3%、12年間(80歳女性の平均余命年数(厚生労働省・完全生命表)))
[合意による消滅時の課税関係]
子が、配偶者居住権の価額に相当する利益(482万円)及び敷地利用権の価額に相当する利益(2,691万円)を、被相続人の配偶者から贈与により取得したものとみなされる。
想定されるケースは、いくつか考えられます。相続税対策の検討時や、実際にこういったケースが発生した時の課税関係にご留意ください。