作成日:2019/10/16
遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転は「代物弁済」 所基通改正
法令だけでは税務上の判断がしきれない部分について、“通達”というかたちで実務上での国税の取扱いを国税庁から公表しています。
税制改正や他の法律、判決の確定などでこの“通達”の取扱いが変わると改正が都度行われますが、この改正についての趣旨も公表されています。先日は、株式等に係る譲渡所得等関係に関する通達等の改正について、趣旨が同庁サイト上で公表されました。確認しましょう。
○譲渡・山林所得関係目次
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/joto-sanrin/sanrin.htm
○「『租税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)」の趣旨説明(情報)(令和元年9月30日)(PDF/670KB)(令和元年10月11日)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/joto-sanrin/0019009-092/0019009-092.pdf
民法(相続法)改正により、遺留分の侵害についての請求(遺留分の減殺請求)が、遺留分侵害額の請求として金銭債権化され、令和元年7月1日以後の相続について適用されています。
ただし金銭での支払いが困難である場合も容易に想定できます。このような場合には、当事者間の合意により、金銭の支払に代えて他の財産による給付が認められることとなりますが、この行為について、税務上は「代物弁済」として、譲渡所得が発生することとなることが、上記改正通達(所基通33-1の6)の趣旨説明で明らかとなっています。
これまで、遺留分の減殺請求は、請求を行うことにより遺贈(贈与)の侵害部分について遺留分権利者に帰属することとなっていました。そのため、相続財産の中からこの帰属部分について遺留分権利者に渡した行為は、あくまでも“相続”の範疇であり譲渡所得になりません。また、受取った側での登記は、相続登記と同等の税率での登録免許税(税率:1000分の4)を納めることとなり、不動産取得税は相続による移転として、基本的にはかかりません。
他方、遺留分侵害額の請求があった場合には、たとえ渡した不動産が相続財産の一部であったとしても、これからは「代物弁済」となります。つまり、渡した側には上記の通り譲渡所得がかかり、受取った側には登録免許税(税率:1000分の20)、不動産取得税がかかることとなります。
これまで以上に遺留分の取扱いについて、留意が必要となります。
関連の民法その他の法令は、上記趣旨説明内にも記載されていますので、改めて確認しておきましょう。
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