会社が金銭債権の将来の貸倒れに備え、一定額を「貸倒引当金」として引当計上をすることは、企業会計上求められています。この「貸倒引当金」の計上は、法人税を計算する上でも、一定の法人について一定の限度額まで認めています。さらに、資本金1億円以下の中小企業等については、租税特別措置法上で規定された優遇制度を適用することができます。この優遇制度は、「中小企業等の貸倒引当金の特例」といわれています。
この「中小企業等の貸倒引当金の特例」について、会計検査院による検証が行われ、11月30日付けで報告がなされました。
○会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告
租税特別措置(中小企業等の貸倒引当金の特例)の適用状況及び検証状況について
http://www.jbaudit.go.jp/pr/kensa/result/30/h301130.html
ここで検証された項目のうち、多くの中小企業等において影響のある次の2点について、2回に分けて少し解説します。
- 法定繰入率と貸倒損失発生率とのかい離の状況
- 期末一括評価債権額に含まれる仮受消費税相当額
今回は、「期末一括評価債権額に含まれる仮受消費税相当額」について、です。
先日ご案内したとおり、法人税法上、貸倒引当金として損金が認めてもらえる限度額(貸倒引当金繰入限度額)を算出するにあたり、個別で貸倒の発生を評価する金銭債権(個別評価金銭債権)以外の金銭債権(一括評価金銭債権)については、原則として過去3年間の貸倒損失の発生割合(貸倒実績率)を用います。
ただし、中小企業等については事務の軽減等配慮がなされ、貸倒実績率でなくとも業種ごとに定めた「法定繰入率」を用いて計算することが認められています。
つまり、中小企業等については、次のいずれかで一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額を算出します。
一括評価金銭債権に係る貸倒引当金繰入限度額
=期末一括評価金銭債権×貸倒実績率
=(期末一括評価金銭債権−実質的に債権とみられないものの額)×法定繰入率
ところで、期末一括評価金銭債権の対象は、売掛金などの金銭債権の期末残高を指しますが、この売掛金には消費税(仮受消費税相当額)が含まれています。
他方、実際貸倒が生じた場合には、その貸倒れた金銭債権に係る仮受消費税相当額は、貸倒損失にはなりません。(消法39等)
つまり、実際に損失とはならない部分を含めて限度額を計算するのはおかしいのではないか、という指摘が今般の会計検査院の検証により報告がなされています。
会計検査院からの「中小企業等の貸倒引当金の特例」の検証と報告のうち、2つピックアップして先日と今回に分けてご案内しました。
さて、平成31年度税制改正にこれらの報告内容が含まれるでしょうか。