作成日:2022/08/03
年収300万円以下では事業所得には該当しなくなるのか?
8月1日付で、所得税基本通達に関する改正案の意見募集(パブリックコメント)が公示されました。
○「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(雑所得の例示等)に対する意見公募手続の実施について
(受付終了後は、上記URLは無効になるものと思われます。ご注意ください。)
今般の改正案は、以下の2つです。これらは、雑所得の範囲を明確化する意図があります。
- その他雑所得の範囲の明確化
その他雑所得(公的年金等に係る雑所得及び業務に係る雑所得以外の雑所得をいいます。)の範囲に、譲渡所得の基因とならない資産の譲渡から生ずる所得(営利を目的として継続的に行う当該資産の譲渡から生ずる所得及び山林の譲渡による所得を除きます。)が含まれることを明確化します。
- 業務に係る雑所得の範囲の明確化
業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。
また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。
注目するのは、上記2.の「その者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱う」というところでしょうか。
どこまで杓子定規にあてはめるか、といったところではあるものの、ここだけをフォーカスした場合、反証があれば、収入金額が300万円以下であっても事業所得とすることができるようですが、そうでない場合に、主たる所得として認められないような300万円以下の収入金額は事業所得としての計上が難しくなる、ということになると思われます。
例を挙げてみますと、たとえば給与の年収が2,000万円あって、年間200万円の講演料がある場合には、主たる所得は給与所得として考えられるでしょうし、反証がなければこの『年間200万円の講演料』は、業務に係る雑所得として取扱う、ということに恐らくなるのでしょう。これまでこのようなケースにおいて『年間200万円の講演料』を事業所得としていた方にとっては、今後も事業所得としたい場合には反証をご準備いただくことになろうかと思われます(実際は前段部分の活動程度も判定要素になるなどの留意点はありますので、ご注意ください)。
このまま改正されれば、令和4年分以後の所得税から適用となります。つまり、今年分からということを意味します。
なお、このパブリックコメントの受付は8月31日が締め切りです。
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