教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、令和5年度税制改正大綱によると「近年利用件数が減少しており、また、資産を多く保有する者による利用が多い等の状況にある。節税的な利用につながらないよう所要の見直しを行った上で、適用期限を3年延長するが、次の期限到来時には、利用件数や利用実態等を踏まえ、制度のあり方について改めて検討する」とあります。
節税的な利用につながらないよう所要の見直しとして、主に以下2つが挙げられます。
- 信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、当該贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23 歳未満である場合等であっても、その死亡の日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
- 受贈者が30 歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとする。
今回は上記1.について、ご案内します。
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、新設された当初、贈与者死亡時に管理残高があったとしても、相続税の課税対象とはなっていませんでした。
そのためこの取扱いに目をつけ、富裕層を中心とした節税的な利用が多くあったことから、平成31年4月1日以後取得分から、贈与者死亡時に管理残高があった場合、その管理残高のうち「死亡前3年以内」に取得した分について相続税の課税対象としました。
ただし、年齢23歳未満である場合や学校等に在学している場合等一定の要件に該当する場合には、対象から外す措置も施しています。
その後、3年以内という微妙な縛りもあり、節税目的での利用は続いていました。そこで、令和3年4月1日以後取得分から、「死亡前3年以内」という縛りを外しました。
もちろん、この場合も上記一定の要件に該当する場合は、対象から外れていました。
そして、今回の令和5年度税制改正において、富裕層の利用を排除する目的で、令和5年4月1日以後取得分から、贈与者の相続税の課税価格の合計が5億円超の場合には、この対象から外す措置をなくし、誰であっても贈与者死亡時の管理残高を相続税の対象とする取扱いとなります。(相続税の課税価格の合計が5億円以下の場合は、現行の取扱いのままです。)
これを表にすると、以下のとおりです。
信託受益権等の取得時期 | 相続税の対象 | 23歳未満等の適用除外 |
---|---|---|
平成25年4月1日〜 平成31年3月31日 |
対象外 | ー |
平成31年4月1日〜 令和3年3月31日 |
対象 (死亡前3年以内取得分のみ) |
適用あり |
令和3年4月1日〜 令和5年3月31日 |
対象 | 適用あり |
令和5年4月1日〜 令和8年3月31日 |
対象 | 適用あり(贈与者の相続税の課税価格合計が5億円以下の場合) |
実際の管理残高の計算等は口座を開設している信託銀行等が行ってくれるため、税理士は計算ロジックを理解する必要はありませんが、相続税の対象となる・ならないの理解は必要です。取扱いがより複雑化しているため、ご注意ください。