働きながら公的年金を受け取っている方が増えているようで、ある程度の金額の給与と年金を受け取っていることで確定申告をされる方が結構いらっしゃいます(プラスして医療費控除の適用を受ける、という方も年齢的に多い印象です)。
従前であれば、この2つの申告は大したことなかったのですが、令和2年分から公的年金等控除額の計算が少し複雑になり、かつ、所得金額調整控除の適用により、給与と公的年金の両方を受給されている方の確定申告がややこしくなっています。
無論、国税庁サイトの「確定申告等作成コーナー」など、金額等の情報を入力することで自動計算してもらうソフトを活用すればさほど問題はないのですが、高齢の方にこのようなソフトを利用していただくのは簡単ではありません。
MyKomonTaxで幾度か紹介している申告書の手引きに計算のステップや計算式などが記載されていますので、上から順に記載されている通りに計算すればよいのですが、どうもこれも難しいようです。
確定申告書Aにより確定申告書を作成するケースを例に、以下、ご案内しますと…
○給与所得の計算での躓き
手引き10ページには、給与所得の計算ができる欄が設けられています。
ここには、StepBとして所得金額調整控除の計算欄があるのですが、これが認識できないようです。
ある程度の金額の給与と年金を受け取っていれば、ここでいう右側の(2)に該当するはずです。
ですが見逃してしまうのです。認識できなかった方にお聞きしたところ、「文字が小さいから」とおっしゃっていました。
ただ、話を聞いていくにつれ、所得金額調整控除の制度が開始される前は、給与所得控除額を差し引いて給与所得の計算は終わりだった、というのが根本的な原因なのではないかな、と思いました。つまり、所得金額調整控除の適用について理解されていない、という印象です。
○雑所得(公的年金等控除額)の計算での躓き
公的年金等控除額は、まず受給者の年齢65歳をボーダーラインとして大きく計算が異なります。これはこれまでと同じであるため、ここでの躓きはないようです。
その次に、手引きの年齢で区別された計算表を基に公的年金等控除額を計算するわけですが、公的年金の収入金額、かつ、公的年金に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて公的年金等控除額が異なるように作成された計算表のうち、“公的年金に係る雑所得以外の合計所得金額”の部分が理解しづらいようで、計算表に記載された控除額すべて控除できる、と勘違いされた方がいらっしゃいました。
例として記載したとおり、300万円の公的年金の収入がある場合、この計算表で見る限り、公的年金等控除額は公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額に応じて110万円、100万円、90万円のうちいずれかになるわけですが、これを左から順に控除し続けて公的年金等控除額は290万円となる(=すべて控除できる)、と理解された方がいらっしゃいました。
説明をして正しく理解していただきましたが、「そうか。そう理解するか」とコンパクトに分かりやすく示すことの難しさを感じました。とはいえ、制度の理解ができていれば問題ないはずで、税計算が複雑になってしまったのが根本だと思っています。