作成日:2017/08/22
詳細な要件規定がパブコメで公表 持分なし医療法人への移行計画認定制度
平成18年の医療法改正以降、医療法人の設立について、いわゆる「持分あり医療法人」が認められていません。
この“持分あり”とは、法人の財産を出資持分割合で払戻しを請求する権利や解散時等の残余財産の分配を請求する権利を有することをいいます。それまでに設立された「持分あり医療法人」については、「経過措置型医療法人」として現在のところ存続が認められていますが、国の政策としては、「持分なし医療法人」へと移行することを推奨しており、促進するための制度が設けられています。
そのうちの1つが、移行計画の認定を受けることを前提とした相続税やみなし贈与税の猶予・免除が受けられる制度です。
この移行計画の認定は平成29年9月30日が期限だったのですが、思うように移行は進んでいません。厚労省が公表している「種類別医療法人数の年次推移(平成29年3月31日現在)」によれば、医療法人数53,000のうち、持分あり社団医療法人(経過措置型医療法人)は40,186あり、未だに75.8%もが残っています。
このような現状を踏まえ、医療法上で定めている移行計画の認定期間を3年間延長し、当該期限を32年9月30日とするとともに、29年度税制改正においても制度の延長措置がとられています。
またこの制度に関しては税制上の措置として、平成29年度税制改正において、上記延長措置以外にも、移行時の持分放棄による法人への贈与税課税をしない制度が創設されました。
他方、医療法上においても、上記認定期間の延長の他、適正な運営要件の追加および移行後6年間の要件維持の義務付けが追加され、10月1日施行が予定されています。この改正に伴い、詳細な運営要件、取消事由の追加、運営状況に関する報告義務について、それぞれ整備が規則上で行われようとしています。
この整備を含めた「医療法施行規則の一部を改正する省令案」が、8月14日にパブコメ上で公表されました。
○「医療法施行規則の一部を改正する省令案」に関する意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170139&Mode=0
また、上記の他、移行計画の認定要件の1つである「社保収入が全体収入の8割を超えていること」について、当該社保収入に一定の予防接種収入も含まれることになっていますが、この社保収入に含める“一定の予防接種”について、5つ告示する案も同時にパブコメ上で公表されています。
○「医療法施行規則第五十七条の二第一項第二号イの規定に基づき厚生労働大臣が定める予防接種を定める件(案)」に関する意見の募集について
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495170138&Mode=0
なお、これらの改正については医療法改正施行にあわせて平成29年10月1日スタートが予定されています。これにより、大枠の認定制度自体は3年延長されるものの、細かな上記改正点について、改正前の方が具合がよければ、9月30日までに認定を受ける必要があります。詳細な改正案の内容を上記URLより確認し、改正前後どちらがよいのか、早急に検討する必要があるでしょう。
関連コンテンツ: