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作成日:2014/10/10
申告書の内容を確認し、自己の責任において署名しても“名義貸し”に



 国税庁の任務の1つには、「税理士業務の適正な運営の確保」があります。


 この運営の範囲内には、税理士や税理士法人(以下、税理士等)の情報収集や税理士等の懲戒処分を対象とした税理士法上の調査などが含まれており、全国の国税局に配置されている税理士監理官がその一端を担っているようです。


 ところで懲戒処分となった税理士等は、国税庁サイト上でも公表されています。

 ○税理士に対する懲戒処分等
  http://www.nta.go.jp/sonota/zeirishi/zeirishiseido/shobun/index.htm

 ここには過去5年間での税理士等の処分等件数が報告されており、処分等件数が増加していることがお分かりいただけると思います。
 特に24事務年度から急激に増えていますが、この理由の1つに、平成23年7月あたりから税務署に配置されていた税理士監理官を各国税局に集約させて事務を執り行うことになり、より機動的に事務が行えるようになったこともあるようです。

 さて、先日参加したある国税局の税理士監理官の綱紀監察研修に出席しました。
 そこでいくつか懲戒処分となった事例をお話いただき、強調されていた部分についてお伝えします。

 たとえば、税理士法第45条第1項の脱税相談等をした場合の懲戒です。
 ここには、「財務大臣は、税理士が、故意に真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、…」とあります。この「故意に」というのは、税理士の関与の度合いは問わない、つまり積極的に脱税に関与したかどうかは問われない、ということをおっしゃっていました。
 積極的に脱税に関与した場合は論外として、顧問先に押し切られたとか泣きつかれたなど、“仕方なく”という場合にもこの「故意に」に該当するのだそうです。
 ちなみにこの第45条第1項に該当した場合には、1年以内(税理士法改正により27年4月1日以降は2年以内)の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分の対象となります。この『税理士業務の禁止』は、税理士登録が抹消され、3年間は登録申請できません。3年経過後に登録申請をし、審査を受けてOKとなったら登録できます。(つまり、3年間は税理士業務が一切できない。)

 また、同条第2項の「財務大臣は、税理士が、相当の注意を怠り、前項に規定する…」とあります。この「相当の注意を怠り」というのは、通常であれば注意したであろうことを怠った場合が該当するのだそうです。たとえば、普段は請求書を確認するのに、確認せず顧問先の口頭だけで処理をした場合です。

 そして、綱紀監察研修で必ず登場するのが“名義貸し”であり、いわゆる『ニセ税理士』といわれるものです。
 名義貸しについて、事例をもとに解説いただきましたが、その事例中「税理士Yは税理士資格のない者が作成した申告書でも、自らが最終的に責任を持てば「名義貸し」にならないと解釈し、(税理士資格のない)Cが作成した申告書の内容確認を条件に署名押印することとした。」という一文がありました。このような署名する税理士が申告内容を確認したとしても、“名義貸し”に該当するそうです。

 詳しい事例は次のとおりです。

概要:
 税理士Yは、独立開業後10年になるが、最近は顧問先も増え、多忙な毎日を送っていたところ、以前の勤務先の所長である税理士Zの息子Cが訪ねてきて、「父が急死して困っている。私は税理士資格を持っていないため、事務所の面倒をみてもらえないか。」と相談してきた。
 税理士Yは、お世話になった税理士Zの息子Cの頼みであることから、何とか面倒を見てあげたいと思ったが、自身の顧問先で手一杯の状況であり、Z税理士事務所の関与先まで面倒をみるほどの余裕はなかった。
 そこで、税理士Yは税理士資格のない者が作成した申告書でも、自らが最終的に責任を持てば「名義貸し」にならないと解釈し、Cが作成した申告書の内容確認を条件に署名押印することとした。
 その後、Cは(有)D計算センターを設立し、同センターで作成した申告書をY税理士に持ち込むようになった。
 (有)D計算センターの顧客からの報酬は税理士Yの口座へ振り込まれ、振り込まれていた額の7割を記帳代行料として、税理士Yから同センターへ支払っている。税理士Yは、決算説明等の業務をCに任せきりであるが、調査の立会は行っていた。

結果:
 税理士Yは名義貸しとなり、税理士法第37条(信用失墜行為の禁止)違反、名義を借りた(有)D計算センターのCは同法第52条(税理士業務の制限)違反として、それぞれ処分の対象となる。

形態図:
  


 ちなみに、(有)D計算センターは『ニセ税理士』として告発の対象となるそうです。

 こういったケースで税理士法違反とならないためには、顧客と税理士との間で顧問契約を締結することにある、とおっしゃっていました。
 類似事例として、懲戒処分として1ヶ月税理士業務停止となってしまった友人の代わりに、その1ヶ月分の申告について代理で署名するという行為も“名義貸し”に該当し、依頼側署名側両方が処分の対象となります。1ヶ月という短い期間であっても、必ず顧客と署名する税理士との間で契約を交わす必要があるそうです。

 なお、この“名義貸し”に関しては、税理士法改正により独立規定になります。条文番号は税理士法第37条の2です。お互い懲戒処分とならないように、気をつけましょう。




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