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作成日:2017/02/27
所得税の確定申告書と住民税の申告書の両方を提出した場合



 先日ご案内した「上場株式等の配当等に係る課税方法、所得税と住民税で分けることも可能」ですが、法律上の取扱いについて少しご説明します。


 現行法上、個人の道府県民税であれば、申告については地方税法第45条の2に、所得税の確定申告の提出を道府県民税の申告書とみなす規定は同法第45条の3に、それぞれ定められています。

第四十五条の三
 第二十四条第一項第一号の者が前年分の所得税につき所得税法第二条第一項第三十七号 の確定申告書(以下本条において「確定申告書」という。)を提出した場合(政令で定める場合を除く。)には、本節の規定の適用については、当該確定申告書が提出された日に前条第一項から第四項までの規定による申告書が提出されたものとみなす。ただし、同日前に当該申告書が提出された場合は、この限りでない。

 上記のただし書きのとおり、現行法上、所得税の確定申告書提出前に住民税の申告書が提出されていれば、住民税の申告書が優先適用されることが定められています。

 そのため、申告不要とする住民税の申告書を総合課税にした所得税の確定申告書提出前に提出すれば現行法でも可能ですが、この取扱いについて平成29年度税制改正で“明確化”されることとなっています。

 ○国会提出法案
  http://www.soumu.go.jp/menu_hourei/k_houan.html
 
 ○地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案 要綱
  http://www.soumu.go.jp/main_content/000464080.pdf
 
第一 地方税法に関する事項
一 道府県民税及び市町村民税
1 上場株式等に係る配当所得等について、提出された申告書に記載された事項その他の事情を勘案して、市町村長が課税方式を決定できることを明確化すること。(第三十二条、第三百十三条、附則第三十三条の二関係)


 新旧対照条文ですと、たとえば上場株式等の配当等に関する申告に係る所得割の課税標準が定められている地方税法第32条の場合は、次の画像のとおりです。

 ○地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案 新旧対照条文
  http://www.soumu.go.jp/main_content/000463690.pdf
  
 
 
 
 今回の改正では、たとえば32条の13において所得税と住民税いずれも申告書が提出された場合の取扱いが追加されること、同条内にこれら申告書の提出時期が、“道府県民税の納税通知書が送達されるときまで”と定められていることから、いずれも申告書が提出された場合の上場株式等の配当等についての適用は、45条の3の規定における“どちらが先に提出したか”ということではなく、32条の13での「申告書の記載事項その他の事情を勘案」することとなるわけです。おそらく住民税の申告書に何らか記載する欄が設けられることになるのでしょう。

 しかし、今回の申告書は当然このような仕様となっていないことや、今回の改正の適用は29年4月1日の施行となりますが、29年度の住民税計算に適用されるのかどうか、現段階では分かりません。

 そのため、もし今回の確定申告で適用されたいのであれば、冒頭の現行法上の解釈を前提に進めていくしかないわけですが、相手は自治体ですからどのような取扱いとなるのか、必ず事前に確認されることをお勧めいたします。




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