BEPS防止措置実施条約が適用される租税条約先として、新たに中国と香港が加わったことが財務省のサイトで6月3日に公表されました。
BEPS防止措置実施条約とは、OECD主導のBEPSプロジェクトにおいて策定された「税源浸食及び利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約」の略称で、このBEPS防止措置実施条約の中から任意に選択した適用範囲を既に締結している租税条約に導入することができます。
ただし、租税条約の締結国・地域双方が選択した条文でなければ、実際に租税条約へ導入することはできないため、その国又は地域ごとにどの部分を選択したかによって、租税条約に導入されるか否かが異なります。
仮に双方が選択して租税条約に導入した条文は、今後個別に締結国・地域同士で交渉することなく、BEPS防止措置実施条約が改正されると、一同に適用される仕組となっています。個別交渉が不要である点が、手間や時間の軽減につながるといえるでしょう。
日本ではすでに、適用する範囲を選択して、2018年9月26日に受託書を寄託、2019年1月1日に発効しています。そのため、租税条約の相手国・地域がいつ寄託、留保及び通告を提出したか、および選択した条文の範囲によって、適用範囲や適用開始時期が異なってきます。
そして今回、中国が新たに本条約の承認書を寄託し、香港によって締結された租税条約に関する留保及び通告を提出したことがOECDの事務総長が公表した2022年5月25日時点の情報で明らかとなりました。
そのため、中国あるいは香港との間で各々締結している租税条約について、9月1日に条件が満たされることとなりました。
中国と香港ではそれぞれ適用する範囲が異なっており、また、適用開始時期が異なります。
適用関係については、以下よりご確認いただくとよいでしょう。
中国では、早くて2023年1月からの非居住者に対して支払われ、又は貸記(口座へ入金)される額に対して源泉徴収される租税から適用が開始されるようです。他方、香港は中国の通告日次第となりますので、ご留意ください。