先日、最高裁判決で国側の勝訴が確定した件をご案内しました。
同じような“伝家の宝刀”を使った更正処分の裁判で、逆に国側が敗訴した最高裁判決が21日に出ました。
先日は、相続税の財産評価に係る“伝家の宝刀”でしたが、今回の裁判は、法人税における“伝家の宝刀”です。
俗に「ユニバーサルミュージック事件」といわれているものです。
具体的には、ユニバーサルミュージックが組織再編成を行った際に海外のグループ法人から借入れた資金に対する利息の支払について、国側が法人税における“伝家の宝刀”である法人税法132@を適用して、借入を否認した上で支払利息を加算する更正処分の取消を求めた裁判です。
先日との違いは、一審・二審ともに国側が負けていることです。今回の最高裁へは国側が上告していました。
法人税法132@は、次の規定です。
税務署長は、次に掲げる法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合において、その法人の行為又は計算で、これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その法人に係る法人税の課税標準若しくは欠損金額又は法人税の額を計算することができる。
一(略)
二(略)
何をもって「不当に減少させる結果となる」のかについては、判決文の中に「同族会社等の行為又は計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当」とあります。
本件では、多額の利息支払いについて“税負担の減少をもたらすことが含まれていた”と判断しているものの、本件での組織再編取引等については、この税負担の減少以外にも目的があることが認められており、結果として経済的合理性を欠くものであるとは認められず、その他の諸事情を含めて総合的に考慮した結果、借入について、“経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものとはいえない”と判断されました。つまり一審・二審を支持し、「不当に減少させる結果となる」ものには当たらない、との見解です。
今回は、国側の“伝家の宝刀”が認められなかった事例となっています。
興味のある方は、上記URLより全文をご確認ください。