市場で売買される取引価格(実勢価格)に比べて相続税評価額が低くその乖離がケースによっては大きいといわれるタワーマンションは、富裕層にとって相続税の節税対策として有用なものとして取扱われてきました。
この節税(いわゆる「タワマン節税」)については、平成29年度税制改正において、建物の相続税評価額の算定基礎となる固定資産税評価額の算定方法を改正することで、高層階を所有する富裕層についての節税効果が幾分薄らいでいました。
他方、土地の相続税評価額は、通常、路線価方式(倍率方式)による算定となっていることから、実勢価格との乖離は生じたままとなっています。
このような中、タワーマンションを相続した相続人が相続税申告をするに当たり、タワーマンションの土地の評価について路線価方式により算定したところ、国税側は“伝家の宝刀”によって鑑定価額で評価を行い、更正処分を行った事案がありました。
この事案について、相続人側はこの処分を不服として訴訟を起こし、地裁・高裁いずれも敗訴、最高裁へ上告していました。
そして最高裁はこの上告審を受けて口頭弁論を開いた上で、4月19日に判決を行い、国側の勝訴が確定しました。
“伝家の宝刀”とは、以下の財産評価基本通達6項(「評価通達6項」「総則6項」ともいわれます。ここでは「総則6項」にします。)を指します。
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
何をもって「不適当と認められる」のか、その基準は非常にあいまいで、実務ではその線引きの判断がしづらく、この「総則6項」による更正処分を巡っては、今回のような裁判例がいくつか存在しています。裁判にまで発展しないケースを含めると、それなりの数になろうかと思います。
節税対策をされている方は、この「総則6項」のリスクと天秤にかけていらっしゃることと思います。今回の最高裁の判断を参考になさってはいかがでしょうか。