会計検査院による令和元年度決算検査報告の中から、特徴的な案件としていくつか同院サイト上で公開されていますが、その中から、法律上源泉徴収義務が生じているため、源泉徴収事務を行い源泉所得税を納付しているものの、結果として課税されないために配当等の受取側に当該源泉所得税が還付されることとなり、税務署としては還付手続き等の事務が生じるとともに、累計で3億円超もの還付加算金が生じた案件をご紹介します。
通常、配当を支払う際には源泉徴収を行い、源泉所得税を納めます。
他方、配当を受け取った側は、税金の計算上、源泉所得税相当額を自身の税金から控除します。
これは、100%子会社の配当等を親会社が受取った場合にも、同様です。
ところで、100%子会社(いわゆる「完全子法人」)の配当等を親会社が受取った場合に、その配当等については100%課税がされません。株式等の保有割合が3分の1超である「関連法人」については、負債利子を控除した額全額が課税されず、ほぼ実質課税がされない状況です。
他方、上記のとおり、配当の受取りの際に源泉徴収がなされているため、源泉所得税相当額は所得税額控除として法人税の計算上、法人税額から控除します。
会計検査院が平成29年度から令和元年度にかけて行われた完全子法人と関連法人等に係る受取配当等について調査したところ、以下のことが判明しました。
- 配当等の合計4兆9067億7695万円のうち益金不算入分は4兆8628億3944万円
⇒99.1%について法人税が課されない状況 - 所得税額控除の額計9934億1336万円のうち、還付が生じたのは8898億6092万円
⇒89.6%について還付事務が生じた - 上記還付に係る還付加算金は3億6563万円(対象法人数:888)
配当等を支払った側の源泉徴収事務負担、受け取った側の一時的な納税負担、税務署側の還付手続き事務負担、そして還付加算金としての無駄な支出、となっています。
会計検査院は、配当等に係る源泉徴収制度の在り方について、財務省に対し、“効率性、有効性等を高める検討を行っていくことが肝要”と所見で述べています。
さて、令和3年度税制改正でどうなるでしょうか。