作成日:2019/06/26
国税不服審判所裁決事例 平成30年10月〜12月分
昨日、「平成30年度 再調査・審査請求・訴訟の概要 国税庁」として、税務調査があった際の不服申立に関する統計をご案内しました。
この不服申立のうち“審査請求”に関して、その事例が国税不服審判所のサイトで公表されています。
○国税不服審判所
http://www.kfs.go.jp/index.html
すべての審査請求が公表されているわけではありませんが、最新版として、平成30年10月〜12月分が先日追加されました。
○平成30年10月〜12月分
http://www.kfs.go.jp/service/JP/idx/113.html
- 国税通則法関係
- (重加算税 隠ぺい、仮装の認定 認めた事例)
- (重加算税 隠ぺい、仮装の認定 認めなかった事例)
- (不服審査 処分の消滅)
- 所得税法関係
- (実質所得者課税 他人名義による不動産の貸付)
- (同業者率を用いた推計の合理性 同業者率に異動があった事例 その他)
- (措置法関係 その他)
- 法人税法関係
- (収益の帰属事業年度 役務提供による収益 その他の役務提供による収入)
- (受取配当金の益金不算入の特例)
- (繰延資産の償却 繰延資産の範囲 その他)
- 相続税関係
- (財産の評価 評価の原則)
- (財産の評価 宅地及び宅地の上に存する権利 その他)
- (財産の評価 雑種地)
- 国税徴収法関係
- (財産の換価等 公売公告)
所得税法関係の「実質所得者課税 他人名義による不動産の貸付」は、土地については子と使用貸借契約を交わし、その上に舗装されているアスファルト部分を子へ贈与した上で、子は賃貸人としての地位を有して、賃借人と新たに賃貸借契約を交わした取引に関するものです。
原処分庁側の言い分として「本件舗装等は、取引観念上、本件各土地を離れて独立した用途に用いられることを想定し得ず、独立の経済的価値を有するものではないから、本件各土地から独立して所有権の客体とはならないものである」と主張している点です。つまり、アスファルト舗装だけを贈与するなんてあり得ない、と。
一方、審判所は「請求人は平成26年2月1日当時○歳と高齢であったこと、本件各契約書の作成をはじめとした本件各土地を巡る一連の取引ないし行為については、Fが請求人の相続対策の相談をしていた本件税理士法人が企図したものであり、本件各契約書の書式も本件税理士法人が作成したものと認められること、また、平成26年2月1日の前後において、本件各土地の駐車場としての利用状況や不動産管理会社(E社又はD社)を介しての管理状況自体に特段の変化が認められないことからすると、本件各契約書の作成目的は、請求人の相続対策の一環として、その所有不動産から生ずる賃料収益の一部を親族間で分散することにより、総体としての租税負担を軽減させることにあったとみるのが相当」と、判断しています。この“高齢”に関しては、契約書の押印をしたのかも分からない、などと申述している点がポイントです。
そして、最終的には「本件各契約書に基づいて、本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が請求人の意思に基づいて成立したものとは認められないし、他に本件各使用貸借契約及び本件各贈与契約が有効に成立したと認めるに足りる的確な証拠もないから、当該各契約が有効に成立したと認めることはできない」と判断を下していました。
相続対策には、十分な留意と検討が必要だということがわかる事例です。
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