作成日:2016/01/26
「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に基づき債権放棄が行われた場合の課税関係について
東日本大震災により生活や事業基盤を失い、再スタートをするために二重ローンを余儀なくされる個人や個人事業主を対象に、破産等の法的手続きではなく、私的な債務整理による債務免除を行うことによって、生活や事業の再建を支援するための指針「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が策定され、平成23年8月22日より適用が開始されています。
このガイドラインは、阪神・淡路大震災(※)を教訓に、東日本大震災では国が私的財産の支援をするというものです。
このガイドラインに基づき支援を行う組織である、「一般社団法人 個人版私的整理ガイドライン運営委員会」のサイト(http://www.kgl.or.jp/)によりますと、同日から平成28年1月15日までの問い合わせ件数等の内訳は、次の通りです。
1.個別のご相談 5,633件(他、一般的な照会等 2,159件)
2.申し出に向けた準備中の件数 1件
3.債務整理開始の申出件数 21件
4.債務整理成立に向けて準備中の件数 22件
5.債務整理の成立件数 1,331件
現在もこのガイドラインは適用され続けていますが、このガイドラインは、東日本大震災によるものであるため、その後も頻繁に発生している甚大な自然災害による被害を受けても、このガイドラインを適用することはできません。
そこで、東日本大震災でなくとも自然災害の影響により生活や事業基盤を失った個人を対象に、再スタートをするための債務支援を行うガイドライン「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(以下、自然災害債務整理ガイドライン)が策定されました。
○自然災害債務整理ガイドライン(全銀協サイトより)
http://www.zenginkyo.or.jp/abstract/disaster-guideline/
この自然災害債務整理ガイドラインに従って債務支援を行い債権放棄が行われた場合の、債権者及び債務者双方の課税関係について、照会がされています。
○「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」に基づき作成された調停条項に従い債権放棄が行われた場合の課税関係について
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/160106/index.htm
課税関係は、既に照会されている「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」と同様、債権者側は債権放棄により生じた損失を債権放棄した日の属する事業年度において貸倒れとして損金算入、債務者側は債務免除を受けたことによる債務免除益を各種所得の金額の計算上、総収入金額に算入しない(つまり課税されない)ものとして取扱われることが確認されています。
自然災害債務整理ガイドラインは、平成27年9月2日後に災害救助法の適用を受けた自然災害が対象で、28年4月1日から適用が開始される予定です。このガイドライン自体に法的拘束力はないものの、自発的に尊重され遵守されることが期待されているものです。ご確認いただき、もし該当する方がいらっしゃいましたら、活用されてはいかがでしょうか。
(※)阪神・淡路大震災のときには、国が私的財産の支援はしない方針であったことから、二重ローンは社会問題化しました。
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