作成日:2017/10/02
法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準 9月28日正式スタート
会計は、一般に公正妥当な会計処理基準に基づき処理を行います。たとえば税効果会計であれば、平成10年に公表されている「税効果会計に係る会計基準」(当時会計基準を策定していた企業会計審議会から)に従って処理を行いますが、実務上この会計基準だけでは処理ができません。補完として実務指針が日本公認会計士協会から公表されており、会計基準の他この実務指針も確認しながら処理を行っています。
つまり、実務上“一般に公正妥当な会計処理基準”に基づき税効果会計を適用するには、会計基準と実務指針の双方を確認する必要があります。このような状況を改善すべく、現在、当該実務指針を会計基準を策定する企業会計基準委員会へ移管する過程において適宜見直され、会計基準に取り入れたり、適用指針として整理すべく審議が重ねられ、随時公表がされています。
この審議の中には、税効果会計に関連する実務指針「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)を会計基準として整理し、策定する審議も含まれていました。そしてこの実務指針について、平成28年11月に「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」として公開草案が企業会計基準委員会により公表され、その後修正を経て、29年3月に『企業会計基準第27号』として公表されました。
○企業会計基準第27号 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」の公表
https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/accounting_standards/y2017/2017-0316.html
この会計基準には、監査・保証実務委員会実務指針第63号の他、「税効果会計Q&A」「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」(実務対応報告第12号)の一部も含まれています。(この公表を受け、監査・保証実務委員会実務指針第63号は公表日と同日に廃止されています。)
○【参考】本会計基準と監査保証実務指針第63号等の比較
https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/tax_2.pdf
ところで、上記公表がされたからといって即改正されるかといえばそうではなく、手順に沿って改正が行われます。
そして、改正がようやく公布日である9月29日付けで施行され、会計基準としてスタートをきりました。
○「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部改正(案)の公表について
http://www.fsa.go.jp/news/29/sonota/20170809.html
○連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件及び財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件の一部を改正する件(金融庁三七)
https://kanpou.npb.go.jp/20170928/20170928g00210/20170928g002100058f.html
肝心な会計基準の内容ですが、基本的にこれまでの取扱いを会計基準として整理しただけで、実務上で混乱するような事態にはなりません。
たとえば当期に係る諸税金の表示場所については、次のとおりです。
税金の種類 | 表示場所 | 科目 | |
・法人税 |
PL | 税引前当期純利益(又は損失)の次 | 『法人税、住民税及び事業税』 などその内容を示す科目 |
事業税(付加価値割及び資本割) | 原則、販売費及び一般管理費 合理的な配分方法に基づきその一部を売上原価として表示することも可能 |
(特段の定めなし) | |
受取利息や受取配当金に係る源泉所得税のうち所得税額控除の適用をしない税額 |
原則、営業外費用 金額の重要性が乏しい場合は、法人税・地方法人税 ・住民税・事業税(所得割)に含めて表示することも可能 |
原則、特段の定めなし | |
外国法人税のうち外国税額控除の適用をしない税額 | 外国子会社からの受取配当金等に係る外国源泉所得税に関するものは、法人税・地方法人税 ・住民税・事業税(所得割)に含めて表示 上記以外は内容に応じて適切に表示 |
内容に応じて適切な科目 | |
法人税、住民税、事業税等のうち納付されていない税額 |
BS | 流動負債 | 『未払法人税等』 などその内容を示す科目 |
法人税、住民税、事業税等のうち未収の還付税額 | 流動資産 | 『未収還付法人税等』 などその内容を示す科目 |
なお、これまで監査・保証実務委員会実務指針第63号等に沿って処理をしてきた会社が、今般当該会計基準を適用することで「会計方針の変更」に該当することはありません。つまり、注記にも影響がない、ということです。この点は実務上疑問に思うところですので、ご留意ください。
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