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次の事例は、平成22年10月に情報公開手続きに則って入手した「非居住者課税のあらまし 平成19年3月国税庁個人課税課作成」より抜粋した質疑応答です。ご参考になりましたら、幸いです。
[問]
米国人Bは日本の内国法人W社の専務取締役であり、昨年4月から2年間の予定でW社の韓国支店に勤務しているが、W社からの報酬が支払われる際には、20%の税率により源泉徴収されている。
Bは日本国内にアパート20室を有しているが、本年分の不動産所得は損失となる予定である。
Bは確定申告の際に不動産所得の損失を給与所得と損益通算することができるか。
[答]
Bは、韓国支店勤務後は国内に恒久的施設を有する非居住者と認められ、国内源泉所得である給与所得を含めすべての所得が総合課税の対象となることから、不動産所得の損失を給与所得と損益通算することができる。
(解説)
1 Bは内国法人の役員であることから「役員として国外において行う勤務」に基因する給与(国内源泉所得)に該当し、W社が報酬を支払う際には20%の税率により源泉徴収されることになる(所法161八イかっこ書、所法212@、213@、所令285@)。
(注)日韓租税条約第16条では、日本の内国法人の役員が韓国の勤務により得た報酬に対しては、日本でも課税することができることとされている。
2 Bが国内に有するアパートは20室であり事業的規模といえることから恒久的施設に該当すると認められる(所基通26−9、164-3)ので、Bは国内に恒久的施設を有する非居住者に該当し、すべての国内源泉所得が総合課税となる(所法161三、164@一)。
したがって、W社の韓国支店勤務に係る給与についても総合課税の対象となるので、不動産所得の損失を給与所得と損益通算することができることになる(所法69、165)。
3 なお、国内に恒久的施設を有しない(不動産の貸付けが事業的規模でない場合を含む。)非居住者である役員については、国外において行う勤務等に基因して支払を受ける給与は源泉分離課税とされていることから(所法164A二)、不動産所得の損失を給与所得と損益通算することはできない。
また、役員ではない社員が2年間の予定で海外勤務をする場合、その海外勤務に基づき支払を受ける給与は非居住者の国外源泉所得に該当し、我が国においては課税対象にならないので、不動産所得の計算上生じた損失と給与所得の損益通算の問題は生じない(所法7@三)。
(関係法令)所法7@三、69、161三、八イかっこ書、164@一・A二、165、212@、213@、所令285@、所基通26−9、164-3、日韓租税条約16