
診療所は儲かっているので診療報酬の改定は必要ない?
来年度の診療報酬改定の議論が「財政制度等審議会」で始まっている。
11月11日に公開された財政制度分科会の配布資料で、医療法人の病院・無床診療所の収益・費用構造が詳細に述べられている。
令和5年に定められた「全ての医療法人の経営情報を決算後3ヶ月以内に提出」義務化により、地域の大病院医療法人や一人医師医療法人の収益・費用構造が明らかになった。
日経新聞の11月5日付の記事の見出しに、「経常利益率、診療所6.4%・病院0.1%」とあった。病院経営が明らかに苦しく、診療所の経営は儲かっている、との印象を与えるような書き出しで、今回の診療報酬の改定は「病院の増額改定を行うべき」との方向性を打ち出しているようだ。
同審議会配布資料を詳細に見ると
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病院 |
診療所(医療法人) |
| 平均の年間収益総額 |
約36億円 |
約1.9億円 |
| 平均の年間経費総額 |
約36億円 |
約1.7億円 |
| 給与費総額 |
約19億円(52.6%) |
約9,400万円(48.3%) |
| 内 院長給与費 |
約2,600万円 |
約2,700万円 |
| 給与費以外の経費 |
約17億円 |
約8,200万円 |
[出典]財務省HP「財政制度分科会(令和7年11月11日開催)資料」より作成
特に診療所では平均収益の13.7%を院長報酬が占め、かつ利益が約2,000万円生じる実態となっている。そのため今回の改定に関しては、特に診療所への増額は期待できないことになるかもしれない。
この配布資料には「医師給与の国際比較」のデータも添付されており、以下のように報告されている。
- 医師の給与水準は国内(全産業)平均の4.5倍、勤務医は2.5倍
- OECD諸国の医師給与は国内(全産業)平均の2.9倍、勤務医は2.1倍
- 日本の医師給与水準は国際的にみても高く、特に診療所の院長の給与水準については、OECDの開業医との比較においても大きく乖離している
病院は現在の物価高や人件費高騰の影響を受けて経営にダメージを受けている。しかし診療所は院長の高い給与水準でも利益を獲得し、経営実態は良好。「診療報酬」の増額改定は必要なし。
配布資料はそう訴えているようだ。
[参考]
財務省「財政制度分科会(令和7年11月11日開催)資料一覧」